企業を当事者とする民事訴訟における上告の手続きについて解説します。本稿では訴訟対応のために代理人弁護士を選任することを前提としています。

上告の位置付け

(1)訴訟を提起すべきか否かの検討
 ↓
(2)訴訟の提起 
 ↓
(3)答弁書の提出
 ↓
(4)第一回期日
 ↓
(5)続行期日
 ↓
(6)証人尋問
 ↓
(7)和解の検討
 ↓
(8)判決
 ↓
(9)控訴
 ↓
(10)上告(←本稿の対象)

上記の全体の流れや他の項目の説明については「訴訟の手続きの流れ」をご覧ください。

最高裁への上告のイメージ

最高裁判所の法廷

上告とは

上告とは、控訴審判決に不服がある場合に上級の裁判所において審理してもらい判決を求めるための手続きをいいます。控訴審が高等裁判所である場合には最高裁判所に上告することになります。以下では控訴審判決に対して最高裁判所に上告することを前提に説明します。

上告理由・上告受理申立理由

上告をするためには法定の上告理由がなければなりません。最高裁への上告理由は、①控訴審判決に憲法の解釈の誤りがあること、その他憲法の違反があること、又は、②法定の手続法上の違反があること、のいずれかとされています。

上記の他に、③控訴審判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある場合、又は、④法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる場合には最高裁判所に対して上告審として事件を受理するよう申し立てることができます。この③④を上告受理申立理由といい、これらに基づく申立てを上告受理申立てといいます。上告受理申立ては上記の①②に基づく上告とは区別されます。

上告の手続き

(1)上告状・上告受理申立書の提出

上告をするためには、控訴審の判決書の送達を受けた日から2週間以内に上告状を控訴審の裁判所に提出します。上告受理の申立てをするためには、同じ期間内に上告受理申立書を控訴審の裁判所に提出します。上告状・上告受理申立書には、当事者、控訴審判決の表示、上告又は上告受理申立てをする旨を記載します。上告状・上告受理申立書には上告理由・上告受理申立理由を記載することもできますが、通常はこれらの理由を記載することはせず、後述する上告理由書・上告受理申立理由書に記載します。2週間の上告期間内に十分な上告理由書・上告受理申立理由書を作成することは困難だからです。控訴状には印紙を添付する必要があります。印紙額は不服を申し立てる部分について訴え提起の場合の2倍となります。

(2)上告理由書・上告受理申立理由書の提出

上告理由書には上告理由(上記①②)を具体的に記載し、上告受理申立理由書には上告受理申立理由(上記③④)を具体的に記載します。上告理由書・上告受理申立理由書は上告提起通知書・上告受理申立通知書(いずれも裁判所から送られてくる書面)の送達を受けた日から50日以内に提出しなければなりません。

後述するとおり、上告審では殆どの事件が門前払いとなり、控訴審判決を破棄する場合にのみ期日が開催されます。そのため、上告・上告受理申立てをする側(上告人・申立人)にとって上告理由書・上告受理申立理由書以外に書面を提出できる機会は与えられないと考えておくべきです。上告理由書・上告受理申立理由書において的確かつ説得的な理由を記載することにより、最高裁に事件として取り上げてもらえるようにする必要があります。

上告審の審理

(1)上告審は法律審であること

上告審は法律審とされています。すなわち、上告審は憲法その他の法令違反の有無について審査する役割を担っており、原則として事実認定の問題には立ち入りません。控訴審において適法に確定した事実は上告審を拘束するとされており、上告審では控訴審で認定された事実に基づいて判断します。もっとも、控訴審の事実認定が経験則に違反するような不合理なものであれば、ごく稀にではありますが上告審が事実認定を覆すことがあります。

(2)殆ど期日は開催されないこと

最高裁は、上告状や上告理由書等の内容から上告に理由がないと認める場合には、期日を開催しないで(口頭弁論を経ないで)上告を棄却することができるとされています。同様に、上告受理申立てに対しても、上告受理申立書や上告受理申立理由書等の内容から申立てに理由がないと認める場合には、不受理決定をすることができます。この場合にも期日は開催されません。最高裁による判断は多くが1年以内に示されます。

上記に対し、最高裁が控訴審判決を破棄する場合には口頭弁論のために期日を開催します。最高裁によって口頭弁論の期日が指定された場合には、ほぼ確実に控訴審判決は破棄されます。もっとも、後述するとおり上告審で控訴審判決が変更される可能性は極めて低いので、殆ど期日は開催されないといえます。

上告審で控訴審判決が変更される可能性

上告審で控訴審判決が変更される可能性は極めて低いものとなります。このことは統計にも表れており、平成29年度に終結した上告審(最高裁)の民事・行政事件について見ると、上告がなされた件数2251件のうち、控訴審判決を破棄したケースは0件(0%)です。また、上告受理申立てがなされた件数2780件のうち、控訴審判決を破棄したケースは21件(0.8%)です。破棄されなかったケースのほぼ全ては上告棄却又は不受理決定です。

このように、上告・上告受理申立てをしても控訴審判決が変更されるケースは非常に限られています。この傾向は平成29年度に限った話ではなく、他の年でも似たような数字です。

上告審での和解

上告審においても和解をすることはできますが、年に数件程度であり、和解がなされる可能性も極めて低いという状況です。下級審で何度も和解の機会はあったにも関わらず最高裁まで争っているような事件であるということからすれば和解は難しいのだと思われます。

上告をするべきか否かの判断

上告審で控訴審判決が変更される可能性の低さを考えれば、余程のことがない限り判決の変更を現実的に期待すべきではないといえます。

とはいえ、上告を検討している事件について以下のような事情があれば多少なりとも控訴審判決が変更される(あるいは何らかの判断が示される)可能性は高まると考えられます。

  • これまでに最高裁が判断したことがない法律問題を含むものであること
  • 高等裁判所の判断が分かれている法律問題を含むものであること
  • 社会的に注目されている事件であり、控訴審判決に対して賛否両論あること
  • 明らかに証拠と整合しない事実認定を行っていること

これらの事情のいずれかがあれば最高裁に取り上げてもらえるかも知れませんが、やはり多くの事件が門前払いになっており非常に狭き門であると考えておくべきです。


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