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会社法

第三者割当増資の手続き(新株の発行)

投稿日 : 2018年11月07日

第三者割当増資の方法によって新株を発行する手続きについて解説します。以下では新株の発行を前提に説明しますが、会社が保有している自己株式(金庫株)を処分する場合も同様の手続きとなります。なお、上場会社であって金融商品取引法に基づく届出・開示を行っている場合には以下で説明する手続きを省略できる場合があります。

発行可能株式総数の確認

会社が新株を発行できるのは定款に定められた発行可能株式総数の範囲内に限られます。設立後の会社は既に発行済みの株式があるので、発行可能株式総数から既に発行済みの株式数を差し引いた数が新株として発行できる株数となります。

(新株として発行できる株数)=(発行可能株式総数)-(発行済みの株数)

仮に新株として発行できる株数が不足するような場合には、定款を変更して発行可能株式総数を増加させる必要があります。

手続きの流れ

募集事項の決定

株主に対する募集事項の開示(公開会社のみ)

募集に対する申込み・割当て

払込みの実施

募集事項の決定

会社が新株を発行する場合には以下の事項(募集事項)を定める必要があります。

【募集事項】
1 発行しようとしている株式の数(募集株式の数)
2 株式の払込金額又はその算定方法
3 現物出資を行う場合にはその内容等
4 出資金の払込期日又は払込期間
5 増加する資本金及び資本準備金に関する事項

上記の1ないし5の事項を定める方法としては、取締役会を設置している公開会社(株式譲渡制限のない会社)の場合は取締役会の決議によります。取締役会を設置している非公開会社(株式譲渡制限のある会社)の場合は株主総会の特別決議により定めるか、株主総会の特別決議によって委任を受けた取締役会の決議によって定めます。

なお、払込金額が新株を引き受ける者にとって特に有利な金額である場合(すなわち払込金額が割安である場合)、いわゆる有利発行にあたり、公開会社であっても募集事項の決定は取締役会決議によって行うことはできず、株主総会の特別決議が必要となります。その際、取締役は有利発行を行うことの必要性を説明しなければなりません。

株主に対する募集事項の開示(公開会社のみ)

非公開会社の場合は募集事項を定めるにあたって株主総会を開催することになるので、株主に対して募集事項が既に開示されています。これに対し、公開会社の場合は取締役会の決議によって募集事項が決定されるため、別途株主に対して募集事項を開示する必要があります。具体的には、払込期日(又は払込期間の初日)の2週間前までに、株主に対して募集事項を通知するか、募集事項を公告しなければなりません。

新株の引受けの申込みと割当先の決定

(1)申込人による新株の引受けの申込みと、会社による割当先の決定

会社は新株の引受けの申込みをしようとする者に対して、①会社の商号、②募集事項、③金銭の払込みの取扱いの場所、④その他法務省令で定める事項、を通知しなければなりません。新株の引受けの申込みをする者は、会社に対し、申込者の氏名・名称、住所、引き受けようとする株式の数、を記載した書面を交付するか又は電磁的方法で提供しなければなりません。また、実務上は会社が金融機関に事務を委託し、申込人は当該金融機関に申込証拠金を支払って新株引受けの申込みをするのが一般的とされています。

申込人からの申込みを受けて、会社は申込人の中から新株の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てられる新株の数を定めます。この割当ては会社が自由に行うことができます(割当て自由の原則)。この割当ての決定は、公開会社においては取締役会決議により、非公開会社においては定款に別段の定めがある場合を除き株主総会決議によります。この割当てを受けた申込人は新株の引受人となり、割当てを受けた新株について払込金額を支払う義務を負います。

(2)総数引受契約を締結する場合(1名が総数を引き受ける場合)

新株を引き受けようとする者である1名がその総数を引き受ける契約を締結する場合、上記(1)の引受けの申込みとその割当てというプロセスが不要になります。ただし、譲渡制限株式である新株についてこのような総数引受契約を行う場合には会社による承認が必要となり、具体的には株主総会(取締役会非設置会社の場合)又は取締役会(取締役会設置会社の場合)において総数引受契約の承認を受けなければなりません。

公開会社における支配株主の異動を伴う新株割当ての特則

公開会社であれば取締役会が設置されているので新株の募集事項の決定やその割当てまで取締役会の決議によって行うことが可能です。しかし、新株の発行によって新たに支配株主が現れるような場合には、会社に対する影響が大きいため株主に対して必要な情報を開示して株主に意思表示の機会を与えるのが適当です。そこで、株式の発行の結果、議決権の二分の一を超えるような支配株主(「特定引受人」といいます)が生じることとなる新株の発行を行おうとする場合、会社は払込期日(又は払込期間の初日)の2週間前までに、株主に対して特定引受人に関する情報を通知するか、公告をしなければなりません。

株主に通知・公告する特定引受人の情報としては氏名・名称、住所、引受けの結果有することとなる株式数等です。この通知・公告は、特定引受人が株式を発行する会社の親会社等である場合には不要です。

総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が上記の通知・公告の日から2週間以内に特定引受人による新株の引受けに反対する旨を会社に対して通知したときは、会社は払込期日(又は払込期間の初日)の前日までに株主総会の承認を受けなければなりません。

払込金額の払込み(出資の履行)

新株の引受人は、払込期日又は払込期間において、会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、引き受けた新株の払込金額の全額を払い込まなければなりません。この払込みをしない場合には引受人は株主となる権利を失います。もっとも、前述のとおり、実務上引受人は新株の申込みの際に申込証拠金を払込取扱金融機関に支払っていることから、この申込証拠金を払込みに充当することで払込みは完了します。

引受人が適式に払込みをすることによって引受人は株主となります。株主となるタイミングは、募集事項において払込期日を定めている場合には払込期日、払込期間を定めている場合には出資の履行をした日とされています。

現物出資の場合

新株発行の募集事項として、金銭以外の財産の出資を定めた場合、いわゆる現物出資にあたり、引受人は会社に対して対象となる財産(現物出資財産)を給付しなければなりません。現物出資の場合、この現物出資財産の価額が適切であるかを確認するため、原則として、裁判所の選任する検査役による調査を行わなければなりません。この検査役による調査には時間と費用がかかりますが、一定の要件を満たすことで検査役の調査を不要とする方法もあります。

変更登記

新株を発行することで発行済株式の総数や資本金の額が増加します。これらは登記事項にあたるので変更登記の申請を行う必要があります。

新株発行の手続きに関するリスク

新株発行の手続きは会社法の規定や定款の定めに従って行う必要があります。法令・定款に違反する新株の発行は差止請求の対象となるおそれがあるほか、発行後に無効とされる可能性もあります。また、仮に必要な手続きを履践しても会社支配権について争いがある場面で新株発行が行われると、著しく不公正な方法にあたるとしてやはり差止請求の対象となるおそれがあります。新株の発行は適法に行われるよう慎重に進める必要があります。
        


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