弁護士 赤塚洋信 公式サイト トップ

  • 弁護士紹介
  • 業務案内
  • 実 績
  • 弁護士費用
  • ご相談の流れ
  • アクセス・お問い合わせ
  • 法務コラム

契約書

契約違反に基づく損害賠償(企業間取引)

投稿日 : 2018年11月12日

企業間取引における取引先・顧客に対する損害賠償請求や、取引先・顧客に対して負う損害賠償義務について解説します。

契約違反に基づく損害賠償義務

企業間取引における損害賠償義務はそのほとんどが契約違反から生じます。契約違反の典型的な例は以下のとおりです。

  • 製品等の不具合
  • 業務・サービスの不履行
  • 納期遅れ
  • 数量不足
  • 品質保証違反

要するに契約で合意した内容を履行しなかったというものです(債務不履行といいます)。契約違反によって相手方に生じた損害を賠償するのが損害賠償義務となります。逆に、損害を被った当事者の側からすると、契約に違反した当事者に対して損害賠償請求を有することとなります。一つの例を挙げると、以下のとおりです。

<事例>
プラスチックの成形材の取引業者が、顧客である日用品のメーカーに対してプラスチック板材を供給する取引を行ったとします。買主である日用品メーカーがその板材を用いて自社の製品を製造したところ、製造後に板材が契約で定めた基準に適合しないものであったことが判明し、強度不足によって製品を廃棄せざるを得なくなりました。そのような場合、売主たる業者は買主に対して製品の製造や廃棄に要した費用について売主は損害賠償義務を負うと考えられます。

契約違反があったか否か

契約違反に基づく損害賠償請求において最初に検討しなければならないのは、契約違反があったか否かという問題です。その出発点として、当事者間で合意された契約内容が何であったのかという点を確定しなければなりません。これは契約書、注文書、当事者間のやりとり、商慣習や過去の類似の取引等から判断することになります。スペックや内容がはっきりしている規格品であれば問題になりにくいでしょうが、オーダーメードの製品・サービスの場合や途中で発注の変更がなされたような場合には合意された内容が必ずしも明確でないことがあります。また、契約書や注文書が取り交わされていても、違反が問題となった部分の解釈について当事者間の認識が一致しない場合もあります(契約時からお互い都合よく解釈していた、ということです)。

次に、当事者間で合意された契約内容を前提に、実際の製品・サービスの提供が契約内容に適合しているかを検討することになります。製品の売買のような対象となる物がある場合にはある程度客観的に判断することができますが、成果物の残らないサービスや評価的な要素が絡む場合は契約内容に適合していたか否かを判断することが難しいといえます。

損害賠償の範囲

契約違反があった場合にどのような損害が賠償の対象となるか、というのが損害賠償の範囲の問題です。法律上、これは通常損害と特別損害というものに分けて考えます。

通常損害とは、契約違反によって通常生じるべき損害です。すなわち、契約違反があれば発生するのが相当と考えられる損害といえます。前述のプラスチック板材の取引の<事例>では、買主が製品の製造や廃棄に要した費用は通常生じるべき損害であるといえるでしょう。通常損害は賠償の対象となる損害に含まれます。

これに対し、特別損害とは当該事案における特別の事情によって生じた損害です。特別損害は当事者(契約の履行責任を負う者)がその事情を予見し、又は予見することができたときに限り、賠償の対象となる損害に含まれます(改正前民法)。例えば、同じくプラスチック板材の取引の<事例>で言えば、買主が大口顧客に対する重要な製品の納入を控えていたところ、板材の不具合によって製品の製造に大幅な遅れが生じてしまったとします。そして、大口顧客に対する製品の納入が遅れるのみならず、買主は当該顧客から今後の取引を打ち切られてしまったとします。そのような取引打切りという事態は板材の不具合によって通常生じるとまではいえず、特別な事情によって生じた損害となると思われます。もっとも、仮に売主が買主による大口顧客との取引について知っていたのであれば、損害の発生を予見することができたとして賠償の範囲に含まれる可能性があります。

損害賠償の方法

損害賠償の方法は原則として金銭を支払う方法によります。当事者同士が合意することによって金銭の支払以外の方法で損害賠償をすることも可能です。

損害賠償義務を負わない場合

(1)債務者の責めに帰することができない場合

契約違反があったとしても、それが当事者(債務者)の責めに帰することができない事由によるものである場合、損害賠償義務を負うことはありません。責めに帰することができないとは、故意・過失がないことを意味し、自らには如何ともしがたい事情によって契約上の義務を履行できなかったような場合をいいます。不可抗力と言い換えることもできます。例えば、前述のプラスチック板材の取引の<事例>について言えば、市場においてプラスチック樹脂の原料が一時的に入手できなくなり板材を製造して納入することができなくなるような場合が考えられます。

(2)契約違反と損害との間に因果関係がない場合

契約違反があっても、生じた損害との間に因果関係がない場合には損害賠償義務を負うことはありません。例えば、同じくプラスチック板材の取引について言えば、売主が契約に適合していない板材を買主に引き渡した後、失火によって買主の工場が焼失してしまったとします。この工場の焼失は売主による契約違反に起因するものではないことから、売主が工場の焼失について責任を負うことはありません。

損害賠償額が減額される場合

(1)過失相殺

過失相殺とは、契約の一方当事者に契約違反があった場合において、その相手方当事者(債権者)に過失があった場合、それを考慮して損害賠償の責任及びその額を定めるというものです。ここでいう過失とは、債権者側の落ち度ないし責めに帰すべき事由といったものです。例えば、プラスチック板材の取引の<事例>について言えば、買主が契約に適合していない板材の納入を受けた際、適切に検査をしていなかったような場合です。検査を怠ったために契約不適合であることに気付かずに製品を製造してしまい、製品を廃棄せざるを得なくなったのであれば、そのような事情は損害賠償額を定めるにあたって相応に考慮されることになります。事案によりますが、過失相殺が行われると損害賠償額が例えば3割減額される、場合によっては7割減額されるということもあります。

なお、債権者の過失が著しい場合、理論上は債務者の損害賠償責任そのものが否定されることもありますが、実際にはそのようなケースは稀であると思われます。

(2)損益相殺

損益相殺とは、契約違反や損害の発生に関連して何らかの利益や補償を受けた場合、当該利益や補償の額を損害から控除するというものです。典型的には損害を被った当事者が当該損害に関して保険金を受け取ったような場合です。保険金によって填補された部分については契約違反をした当事者に対して損害賠償を請求することができません。また、損害を被った当事者が契約違反に関連して何らかの支出を免れることとなった場合、当該免れた支出に相当する金額も損害から控除されます。

(3)損害を被った当事者が損害の軽減措置を怠った場合

契約違反によって損害が発生した場合であっても、損害を被った当事者が損害の発生や拡大を防止又は軽減することができたのであれば、そのようにすべきであったといえます(損害軽減義務という言い方をすることがあります)。損害の防止や軽減ができたにもかかわらず、それを怠って漫然と損害を発生・拡大させてしまった場合にはそのような事情を考慮するのが公平といえます。そこで、契約違反によって損害が生じた場合であっても損害を被った当事者が損害の軽減措置を怠ったときには、そのような損害は賠償の対象とはならないことがあります。

損害賠償請求をどのように行うか

契約違反があった場合にどのように損害賠償請求を行うかについては法律上の決まりはありません。取引関係にある当事者同士であればまずは窓口となっている部署を通じて請求を行うことになると思われます。それで合意できれば良いのですが、当事者間で責任の所在や損害額等について合意できない場合には問題がエスカレートすることになります。売買の発注者側の当事者としては、今後の取引を見直す等の方法でプレッシャーをかけることになるでしょうし、場合によっては法的な手続きに発展することもあるでしょう。仮に訴訟になるとすれば損害賠償請求訴訟を提起することになります。

金銭債務の特則

上記の議論は製品・サービスの提供について義務違反があった場合を想定してのものでしたが、契約の発注者が代金を支払わないという場合も契約違反にあたることは当然です。しかし、代金の支払いのような金銭債務の不履行については民法に特則があります。すなわち、①金銭債務の不履行の損害賠償の額は法定利率又は約定利率によって定める、②債権者は損害の証明をすることを要しない、③債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない、というものです。要するに、代金の支払いのような金銭債務の不履行の場合、債権者は損害の証明をせずして法定利率又は約定利率によって定められる遅延損害金を受領することができるものの、それ以上の損害を請求することはできないこととなります。

例えば、遅延損害金を年利14.6%と定めている売買契約の場合、買主による代金支払いの遅れがあれば売主はこの約定利率で計算される遅延損害金を請求することができます。しかし、代金支払いが遅れたことによって売主が資金不足に陥り、別の取引を行う機会を逸してしまったとしても、それに伴う損害を請求することはできません。
       


契約書に関して他にもお役に立つ記事を掲載しています。
【記事カテゴリー】契約書

取引先とのトラブルについて弁護士に相談することができます。
【業務案内】取引先・顧客とのトラブル対応

TOP

TOP