ビジネス訴訟
判決の手続き(民事訴訟)
投稿日 : 2019年01月13日企業を当事者とする民事訴訟における判決手続きについて解説します。
判決言渡し期日
(1)期日の指定
判決は 口頭弁論(当事者による主張立証)が終結した後に、指定された判決期日において言い渡されます。 通常は 口頭弁論の終結から2か月以内に言い渡すものとされています。事件が複雑であるなどの特別な事情がある場合には判決言渡しまでより長い期間を要することがあります。
(2)期日当日
判決言渡しは公開の法廷で行います。裁判官は判決の主文を口頭で朗読して言い渡します。判決理由については通常は省略されます。実務では当事者や代理人が判決言渡しを受けるために期日に出席することはしません。判決言い渡し後、電話で裁判所に問い合わせて判決内容を確認するのが一般的です(もちろん、判決言渡しを法廷で聞きたい場合には期日に出席することも可能です)。
判決の送達
判決書は、言渡し後遅滞なく、裁判所書記官に交付されます。判決書はこの交付後2週間以内に当事者に送達しなければならないとされています。送達の方法は、具体的には裁判所において手渡しで送達するか、郵送で送達するかのいずれかになります。
勝訴した側としては裁判所に赴いて早々に判決書を受け取れば良いといえます。これに対し、敗訴した側は直ちには判決書を受け取らず、郵送による送達を希望するなどして受け取りを遅らせることもあります。判決書を受け取ってしまうと2週間の控訴期間の計算が始まってしまうからです。
判決の内容
法律上、判決において記載しなければならないとされている事項は、主文、事実、理由、口頭弁論の終結の日、当事者及び法定代理人、裁判所です。このうち、結論を示すのが主文であり、主文を導くためにどのような認定・判断をしたかを示すのが事実及び理由です。
(1)主文
主文には判決の結論が示されます。例えば、貸金返還請求であれば、「被告は、原告に対し、〇〇円を支払え」という主文であったり、建物明渡請求であれば、「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ」という主文であったりします。これに対し、請求を棄却する場合には、「原告の請求を棄却する」という主文となります。請求の一部のみを認容する場合には、例えば、「被告は、原告に対し、〇〇円を支払え」(支払いを命じる金額は請求額よりも低い金額)という主文に加え、「原告のその余の請求を棄却する」という主文が加わります。
主文は給付を命じる内容であれば強制執行することができます。金銭の支払いを命じる内容であれば、その判決に基づいて相手方の財産を差し押さえることができます。建物の明渡しを命じる内容であれば、相手方を強制的に建物から立ち退かせることができます。
主文では訴訟費用の負担についても判断されます。訴訟費用は裁判所に納付した印紙代や証人の旅費・日当などです。弁護士費用は含まれません。
財産上の請求に関する判決には仮執行宣言が付されることもあります。本来であれば判決は確定しなければ執行できませんが、仮執行宣言が付されると判決が確定する前であっても判決の内容を仮に執行できます。
(2)事実及び理由
主文を導くためにどのような認定・判断をしたかを示すのが事実及び理由です。現在主流となっている判決のスタイルでは以下の内容が含まれます。
- 請求
原告が求めた請求の内容を記載します。 - 前提事実
当事者間に争いのない事実、証拠等により容易に認定できる事実を記載します。 - 争点及び争点に関する当事者の主張
争点が何であるか、当該争点について原告と被告がそれぞれどのような主張をしているかを記載します。 - 争点に対する判断(裁判所の判断)
争点について裁判所がどのような判断を示したかを記載します。具体的には、争点の判断のためにどのような事実を認定したか、認定の根拠となった証拠等は何であるか、認定した事実に適用ある法律を当てはめてどのような結論を導いたかを示すことになります。
判決を受けた対応
(1)勝訴した当事者
勝訴した側としては特別な事情がない限り急ぐことはありません。相手方が控訴期間である2週間以内に控訴するか否かを確認することになります。
判決に仮執行宣言が付されている場合には相手方が控訴しても強制執行を行うことが可能です。後述する強制執行停止の決定がなされない限りは仮執行宣言に基づく強制執行を行うことも検討することになります。
(2)敗訴した当事者
敗訴した側としては控訴を検討することになります。請求の一部が認められなかった一部敗訴の場合についても同様です。
控訴する場合には判決書の送達を受けてから2週間以内に控訴状を裁判所に提出します。また、控訴の提起後50日以内に控訴理由書を提出する必要があります。控訴状の提出までには2週間しかなく、時間的にかなりタイトであるため、判決前までに可能な限り控訴に関する方針を検討しておくのが望ましいといえます。特に、裁判所の心証開示がなされていて敗訴見込みであることが分かっている場合には事前に控訴するか否かをある程度検討できるはずです。
判決に仮執行宣言が付されている場合には判決確定前に強制執行を受ける可能性があります。そのため、控訴して争う場合には強制執行停止の決定を申し立てることを検討する必要があります。この場面で用いられる強制執行停止の決定とは、仮執行宣言付きの判決についてその強制執行の一時停止を命じる決定をいいます。強制執行停止を求める当事者は、そのような決定を得るための要件を疎明する必要があるほか、通常は担保の提供を求められることになります。
訴訟・裁判の手続きの流れ
(1)訴訟を提起すべきか否かの検討
↓
(2)訴訟の提起
↓
(3)答弁書の提出
↓
(4)第一回期日
↓
(5)続行期日
↓
(6)証人尋問
↓
(7)和解の検討
↓
(8)判決(←本稿の対象)
↓
(9)控訴
↓
(10)上告
上記の全体の流れや他の項目の説明については「訴訟の手続きの流れ」をご覧ください。
次は、「控訴」について解説します。
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