ビジネス訴訟
証人尋問の手続き(民事訴訟)
投稿日 : 2019年01月13日企業を当事者とする民事訴訟における証人尋問について解説します。本稿では訴訟対応のために代理人弁護士を選任することを前提としています。
証人尋問の手続きの概要
証人尋問は事件の当事者や関係者が法廷で証言をすることによりその供述内容を証拠とする手続きです。訴訟では証人尋問は争点及び証拠の整理が終わった後にできる限り集中して行うものとされています(集中証拠調べといいます)。複数の証人がいても1日、長くても2日程度で行うのが実務です。
証人尋問は、主尋問→反対尋問→再主尋問→補充尋問という流れで進むことが一般的です。それぞれの内容については後述します。
厳密に言うと事件の当事者が尋問の対象となる場合は当事者尋問といいますが、証人尋問の手続きとあまり区別せずに行われるため、本稿では当事者尋問も含めて証人尋問として説明します。なお、当事者が会社の場合、代表取締役が当事者本人として扱われます。
証人尋問の事前準備
(1)証人の選定
誰を証人とするかを検討します。もちろん、事件の争点について最もよく知る人物が証人候補となります。企業間訴訟であれば問題となる取引を担当していた社員やその上席者などが考えられます。
証人尋問に協力してくれる人物であるか否かも重要なポイントです。証人は法廷で証言をするという非日常的でストレスのかかる務めを果たす必要があります。また、当日の出廷のみならず、陳述書の作成やリハーサルなど様々な負担を強いられます。そのような負担を受け入れてくれる人物でないと証人は務まりません。
(2)証人申請
裁判所に証拠申出書を提出して証人を申請します。証拠申出書には、誰を証人申請するのか、尋問予定時間、尋問事項などを記載します。また、証人申請に際しては当該証人の陳述書(後述)の提出を求められることも多くあります。
(3)証人決定
裁判所は申請された証人の中から実際に証人として採用する者を決定します。この決定は裁判所が独断で行うというわけではなく、当事者の意見を聴きながら慎重に行います。例えば、裁判所としては必ずしも必要性が高くないと考える証人であっても、当事者が是非呼びたいと考えている場合には尋問時間を短くすることで証人として採用してもらえることがあります。
証人決定をする際にはそれぞれの証人の尋問時間(主尋問・反対尋問ごと)や証言の順序についても決定します。
陳述書の作成
証人ごとに陳述書を作成します。陳述書とは、証人が証言する予定の事実を書面にまとめたものです。陳述書の内容に特に決まりはなく自由に記載することができますが、証言する予定の事実を過不足なく記載するべきといえます。具体的には、証人の経歴、証人と事件との関わり、証人が事件について知っている内容(特に争点に関する事実関係)、を記載することになります。
作成のプロセスは概ね準備書面と同様で、証人予定者から弁護士が聞き取りを行う→弁護士が陳述書のドラフト(原稿)を作成する→証人予定者が陳述書のドラフトの内容をチェックする→必要に応じて修正する、という流れです。これとは異なり、証人予定者が陳述書のドラフトを作成して弁護士がチェックするという方法もあります。
実務で陳述書を提出することとされている理由はいくつかあります。陳述書を作成することで裁判所は証人として呼ぶ価値があるのかを判断しやすくなります。また、陳述書は主尋問の一部を代替することができ、尋問を効率的に行うことができます。さらに、陳述書があることで相手方当事者は反対尋問の準備が可能となります。
リハーサルの実施
証人尋問に先立ってリハーサルを行うのが通常です。リハーサルでは実際の証人尋問で行われるのと同様、主尋問と反対尋問を証人に体験してもらいます。
リハーサルは尋問事項メモに基づいて行います。尋問事項メモは実際に代理人が質問する内容と証人に回答して欲しい内容を記載したものです。この質問を証人に投げかけ、証人が何も見ないで答える方法でリハーサルを行います。本番の主尋問においても尋問事項メモに基づいて質問をします。リハーサルでの証人の受け答えやリハーサルに要した時間を踏まえて尋問事項メモの内容や聞き方などを適宜修正します。
リハーサルでは主尋問のみならず反対尋問の練習も行います。相手方代理人から予想される反対尋問の内容を証人に質問し、本番で落ち着いて回答できるように備えます。
証人尋問期日
証人尋問の期日における手続きの流れは以下のとおりです。
(1)人定質問
裁判官が証人に対し、氏名や住所、生年月日を確認します。
(2)宣誓
裁判所が準備した宣誓書を証人が読み上げる方法で宣誓をします。宣誓では、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べない旨を誓約することになります。宣誓を行ったうえで虚偽の供述をすると偽証罪に問われるおそれがあるので注意が必要です(当事者の場合は過料の制裁)。
(3)主尋問
最初に証人の申請をした当事者が尋問を行います。これを主尋問といい、立証しようとする事項に関する証人の供述を引き出すために行われます。例えば、原告側の証人であれば原告代理人が証人に対して質問を行うことになります。主尋問はリハーサルで練習しているはずですし、答えに詰まっても代理人が助け船を出してくれるのであまり心配する必要はありません。
既に陳述書を提出してあるので主尋問で何を供述するかについては明らかになっています。にもかかわらず、やはり証人が自ら口頭で供述し、それを直接裁判官に聞いてもらう機会というのは貴重といえます。それによって裁判官は供述内容の信用性を判断することができ、また、証人がどのような人物であるかを知ることは事案の理解に大いに役立つからです。
(4)反対尋問
主尋問に続いて相手方代理人が証人に反対尋問を行います。反対尋問は、主尋問でなされた証言について、その真実性や信用性を攻撃するために行われます。目標は裁判官に対して証言への疑問を抱かせ、証言内容に基づいた事実認定を阻止することにあります。
反対尋問をする側の当事者としては、反対尋問において証言内容と書証との食い違いを指摘したり、証言内容の不自然な点や矛盾している点などを突く質問をすることになります。また、可能であれば自らに有利な供述を引き出せるよう努めます。もっとも、一般論として、反対尋問で証言の信用性を完全に崩すことや相手方の証人から自らに有利な供述を引き出すことは容易ではありません。
(5)再主尋問
再主尋問は反対尋問の後に証人の申請をした当事者が再度尋問することをいいます。これは反対尋問において揺らいだ供述の信用性を回復させるために行います。例えば、反対尋問でうまく答えられなかった質問や回答が適切でなかったと思われる質問について、改めて証人の答えやすい方法で質問をし直すことで証人の意図が伝わるように証言させ、反対尋問の効果を減殺します。
(6)補充尋問
当事者双方による尋問が終わったあと、必要に応じて裁判官が証人を尋問することがあります。これを補充尋問といいます。証人の証言内容に不明瞭な部分があったり裁判官として特に確認しておきたい事項がある場合に行われます。
訴訟・裁判の手続きの流れ
(1)訴訟を提起すべきか否かの検討
↓
(2)訴訟の提起
↓
(3)答弁書の提出
↓
(4)第一回期日
↓
(5)続行期日
↓
(6)証人尋問(←本稿の対象)
↓
(7)和解の検討
↓
(8)判決
↓
(9)控訴
↓
(10)上告
上記の全体の流れや他の項目の説明については「訴訟の手続きの流れ」をご覧ください。
次は、「和解の検討」について解説します。
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