債権回収
商品の引揚げによる債権回収
投稿日 : 2017年11月30日取引先が保管している商品の引揚げ(取戻し)について説明していきます。
自社が販売した商品の引揚げ(取戻し)
自社が取引先に商品を販売した後、取引先から代金の支払いがない場合、販売した商品を返してもらうことで売買をなかった状態に戻すことができます。
商品を引き揚げるにあたっては、以下の点に留意する必要があります。
① 自社が取引先に商品を販売した以上、商品の所有権は取引先が有していること。したがって、自社が商品を引き揚げるためにはその法的な根拠が必要であること。
(取引先から代金の支払いがない場合であっても、自社としては原則として「代金を支払え」と請求できるのみです。未払いをもって直ちに商品を引き揚げることが許されるわけではありません。)
② 仮に自社が商品を引き揚げるための法的な根拠を有する場合であっても、実際に商品を取引先から搬出する場合には必ず取引先の承諾を得ておくこと。
商品の引揚げのための法的な根拠
上記1で述べた留意点のうち①について、具体的には商品引き揚げのためには元の契約を解除することが必要となります。取引が解除されると取引先としては受け取った商品の所有権を失い、自社(売主)に返却しなければならなくなります。契約を解除するためは契約に定められている解除事由を満たす必要があります。通常、契約には以下の解除事由が定められていることが多いといえます。
A 相手方(本件では取引先)が契約上の義務を履行しない場合において、一定期間以内に履行をするべき旨の催告を受けてもなお履行しないとき
B 手形又は小切手の不渡り処分を受けたとき
C 差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立て、又は公租公課の滞納処分を受けたとき
D 営業許可の取消し又は停止の処分を受けたとき
E 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始又は特別清算開始の申立てがなされたとき
F 解散の決議をしたとき
自社の取引先に対する売掛債権の支払期限が到来しているときには、上記のAで解除できることが多いと思われます。これに対し、売掛債権の支払期限が到来していない場合には他の条項に基づく解除の可否を検討することになります。
解除以外にも商品の引揚げの法的根拠を満たす方法としては、契約上、所有権留保を合意としている場合、所有権留保の権利実行として行うことも考えられます(所有権留保とは、代金支払いがあるまでは商品の所有権を売主に留保するという契約条件です)。
また、取引先の協力が得られるのであれば、合意で契約を解除する、又は商品を返品処理してもらうことで商品引揚げを正当化することができます。
取引先の承諾を得ること
契約の解除等をすることによって自社が商品を引き揚げる法的根拠を有する場合であっても、取引先の承諾なく商品を持ち出すことは許されません。自社に商品の所有権がある場合であっても、それを保管しているのは取引先です。そのような取引先の保管状態(法律上は占有といいます)は法律上保護されています。したがって、取引先の管理下にある商品を持ち出す場合には、その所有権のいかんを問わず、取引先の承諾を得て行う必要があります。
仮に取引先の承諾なく勝手に商品を引き揚げてしまった場合には、刑事上、住居侵入罪(刑法130条)、窃盗罪(刑法235条)に該当するおそれがあります。犯罪行為として捜査・起訴の対象となるリスクがあるのでご注意ください。
この承諾を得るにあたっては、承諾の事実を記録に残すために取引先から承諾書を得ておくのが安全です。
取引先が自社の商品引揚げに応じない場合
取引先が自社の商品引揚げに応じない場合、自社の所有物であるにもかかわらず、取引先の倉庫内に商品が残ることになります。そのため、取引先によって商品を転売されてしまったり、他の債権者に対して代物弁済として引き渡されてしまうおそれがあります。そこで、商品が自社の所有物であり、取引先が処分できないものであることを他人に示すため、商品に自社所有であることを示すタグやシールを貼付する等の方法を検討すべきです。また、商品を外部に持ち出されないよう、処分禁止の仮処分(売却等を禁止する裁判所の命令)や占有移転禁止の仮処分(対象物の移動を禁止する裁判所の命令)を申し立てることも考えられます。
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