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債権回収

動産売買の先取特権による債権回収

投稿日 : 2017年12月02日

動産売買先取特権(どうさんばいばい・さきどりとっけん)による債権回収について解説していきます。

動産売買先取特権とは?

動産売買先取特権(どうさんばいばい・さきどりとっけん)とは、物の売買があった場合において、民法の規定によって発生する担保権です。これにより、売主は売買の対象物たる商品について優先的に弁済を受けられる権利を取得します。法律によって当然に生じる権利なので当事者間の担保設定契約がなくとも良いのが特徴です。

動産売買先取特権は売買の目的物がどこにあるかによって行使のされ方が異なります。以下、場合を分けて説明します。

商品が取引先の下にある場合

動産売買先取特権の例その1

商品が取引先の下にある場合、売主である自社は取引先の下にある商品そのものに対して担保権を有します。すなわち、代金が支払われない場合、商品を差し押さえ、これを競売にかけることによって代金回収を図ることができます。

動産売買先取特権の行使のためには以下のいずれかが必要とされています。

  • 債権者が対象となる動産(商品)を執行官に提出する
  • 対象となる動産(商品)を保管する者が差押えを承諾する旨の文書を執行官に提出する
  • 債権者が先取特権を有することを証明する文書を裁判所に提出し、裁判所の許可を得る

上記のうち、最初の2つは事実上困難です。そのため、3つ目の裁判所の許可を得るのが現実的な方法です。もっとも、裁判所の許可を得るためには債権者が先取特権を有することを証明する文書を提出する必要があります。

次に、動産売買先取特権の実行の場面においては執行官が商品のある場所に赴き、商品を差し押さえるのですが、売主が特定した商品と実際に買主が保管している商品が同一であることを執行官が確認できなければなりません。商品や包装に付された固有の番号等で同一性が確認できなければ執行官が差押えを認めてくれない可能性があります。さらに、執行官が差し押さえることができたとしても、その商品を競売にかけて換価する手続きが必要です。

手続き面での手間や不確実性を考えると、動産売買先取特権は使い勝手が悪いと言わざるを得ません。

商品が取引先の下にある場合には、動産売買先取特権を行使するよりも、売買契約を解除して商品を引き揚げる(取り戻す)方が簡便といえます(ただし、取戻しには買主である取引先の承諾が必要です)。

商品が転売されている場合(物上代位)

動産売買先取特権の例その2

自社が取引先に売った商品が転売され、商品が転売先にある場合、当該商品に対しては動産売買先取特権を行使することができません。すなわち、転売先が商品の所有権を取得してしまうと、それ以降自社は商品を差し押さえて換価・回収をすることはできなくなるのです。

しかし、このようなケースであっても債権回収を図る方法はあります。それは、動産売買先取特権に基づく物上代位というものです。この場合の物上代位とは、動産売買先取特権の目的物であった物(商品)が転売された場合に、その転売による売却代金に対して担保権者(元の売主)が権利を行使できる、というものです。この売却代金は言うなれば動産売買先取特権の目的物(商品)が形を変えた権利です。そのような場合、担保権者(売主)は形を変えた権利である売却代金から回収を図ることが認められているのです。

この動産売買先取特権に基づく物上代位を行うためには、売主は売却代金(上の図の120万円の転売債権)を差し押さえる必要があります。具体的には、裁判所に申立てを行って差押命令を出してもらうのですが、そのためには裁判所に対して、①売主が商品を売却した事実、②買主が同じ商品を転売先に転売した事実、を証明しなければなりません。

このうち、①については売主にも取引書類が残っているはずなので証明は可能です。これに対し、②の転売の事実については、売主としては転売したことまでは把握できていても、それを裁判所に対して証明することは容易ではありません。そのため、この②の事実を証明するためには転売先の協力が不可欠です。転売先から転売の事実に関する取引書類を提供してもらい、それをもって②の事実を証明することになります。

もっとも、その場合であっても、売主が取引先に売った商品と、転売先が購入した商品とが同一であることが権利行使の要件となります。この同一性の確認はかなり正確に行う必要があり、しっかり準備しなければ裁判所は差押えを認めてくれないので注意が必要です。

上記の物上代位に基づく差押えは、転売先が商品代金を支払う前までに行う必要があります。転売先が商品代金を支払ってしまうと、権利行使の対象となる転売債権が消滅してしまうので、売主は転売債権を差し押さえることができません。

動産売買先取特権やそれに基づく物上代位は、担保を設定する契約がなくとも法律の規定によって当然に生じる権利です。契約上の担保のない売主にとって是非検討したい回収方法です。
          


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