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会社法

取締役の職務・権限

投稿日 : 2018年04月07日

取締役の職務・権限に関する会社法上の規定や判例について解説します。

取締役会を設置している会社(「取締役会設置会社」)と、取締役会を設置していない会社(「取締役会設置会社」)とでは取締役の権限が異なるので、両者を分けて説明します。なお、取締役会設置会社は法令上の用語ではありませんが、便宜的に取締役会設置会社と区別するために用います。

なお、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は本稿の対象ではありません。

取締役会設置会社における取締役の役割

取締役会設置会社の機関

取締役会設置会社では典型的には以下の機関が存在します。

  • 取締役会(全ての取締役によって構成される)
  • 代表取締役
  • 取締役(代表取締役以外の取締役)
  • 監査役

代表取締役は会社を代表します。また、会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有するものとされています。代表取締役の職務・権限については代表取締役の職務・権限をご覧ください。

監査役は取締役の職務の執行を監査するものとされています。監査役の職務・権限については別稿で解説します。

取締役の職務・権限

(1) 取締役会の構成員としての職務・権限

代表取締役以外の取締役は取締役会の構成員として取締役会に関与します。取締役会の権限は、会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職です。

  • 業務執行の決定とは、会社の業務に関する意思決定です。会社の業務には事業計画の立案、製品の製造、サービスの提供、営業活動、人材管理、資金調達などが含まれますが、これらに関する方針を策定し、また、重要な個別事案について判断を下すのが業務執行の決定です。
  • 取締役の職務の執行の監督とは、個々の取締役が適正に職務を行っているかを監督することです。特に、業務執行権限を有する代表取締役や業務執行取締役(後述)による業務執行を監督することが重要となります。
  • 代表取締役の選定及び解職は、文字どおり代表取締役を誰にするかを決定し、不適任であれば解職することです。代表取締役は取締役の中から選定されます。

上記の取締役会の権限行使について、取締役は取締役会の構成員として関与します。具体的には、取締役会における議事に参加し、決議に際しては議決権を行使することになります。

また、判例では、取締役の監視義務は取締役会に上程された事柄に限られない、としています。そのため、取締役会に上程された事柄でなくとも、必要に応じて業務執行が適正に行われるようにすることが求められているといえます。例えば、取締役が会社において何らかの不正行為が行われているとの疑いを持った場合、自ら調査したり、取締役会で取り上げるなどの対応をとる必要があります。

(2) 業務執行権限

代表取締役は会社の業務を執行する権限を有しますが、代表取締役以外の取締役についても、取締役会の決議によって業務執行取締役として選定された場合には会社の業務を執行する権限を有します。また、必ずしも業務執行取締役としての選定手続きがなされていなくても、取締役が業務執行を行うことは実務上多くみられます。

取締役が使用人を兼ねる取締役(使用人兼務取締役)である場合、使用人としての立場で業務執行を行うことがあります。使用人兼務取締役としての業務執行は取締役固有の権限としての業務執行とは理論上は区別されるべきものですが、実態としては重なり合っており、その区別は明確でないと思われます。いずれの立場の業務執行であっても、業務執行の最高責任者である代表取締役の指揮又は委任の下に行われることになります。

取締役会設置会社における取締役の役割

取締役会設置会社の機関

取締役会設置会社では以下の機関が存在します。取締役以外の機関(監査役等)を設置するか否かは任意です。

  • 代表取締役(選任された場合のみ)
  • 取締役(代表取締役以外の取締役)

取締役の職務・権限

(1) 業務執行の決定

前述のとおり、業務執行の決定とは、会社の業務に関する意思決定です。取締役会設置会社においては取締役が業務執行の決定を行い、取締役が複数の場合には過半数をもって決定します。

(2) 業務執行権限

取締役会設置会社の取締役は業務執行権限を有します。

(3) 代表権

取締役会設置会社の取締役は会社を代表する権限を有します。具体的には、他の会社と契約を締結するなどの対外的な行為を行うことができます。ただし、取締役の中から代表取締役を選定することもでき、代表取締役を選定した場合には代表取締役のみが代表権を有します。

会社法の想定するモデルと実際の会社運営の乖離

会社法では、取締役会設置会社において、取締役会が代表取締役を監視・監督することが想定されています。これは、取締役会による監視・監督を通じて、会社における業務執行が適正になされることを担保しようという考えに基づくものです。

しかし、殆どの会社では、代表取締役は社長の地位にあります。代表取締役社長は会社における指揮命令系統のトップに位置し、事実上、各取締役の人事権を含む広範な決定権を有しています。そのため、代表取締役が各取締役の所掌業務を決定し、そのパフォーマンスを評価しているのが実態といえます。そのような会社運営の実情からすると、会社法の想定するモデルとは異なり、部下たる取締役で構成される取締役会が代表取締役の業務執行を監視・監督することは期待しにくいといえます。

また、重要な業務執行の決定についても、社長が単独で、又は専務等の一部の役員と共に行い、取締役会における決定は形骸化してしまうこともあります。

本稿では会社のガバナンスについて詳細に検討することはしませんが、多くの会社において、会社法の想定しているモデルと会社運営の実態が乖離していることには留意しておくべきです。また、仮に取締役会が代表取締役を監視・監督することが難しい状況にあったとしても、そのことをもって直ちに個々の取締役が責任を免れるわけではないことにも注意が必要です。
      


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