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会社法

取締役を解任する方法と注意点

投稿日 : 2018年04月07日

取締役の解任に関する方法やその注意点について会社法上の規定や判例を踏まえて解説します。

取締役の解任とは

解任とは選任者の一方的な意思表示で職務を解くことをいいます。これに対し、辞任は取締役の自発的な意思によって取締役の職務から退くことをいいます。取締役の辞任についてはこちらの記事(取締役の辞任とその注意点)をご参照ください。

取締役の解任は株主総会の決議によって行う

取締役の解任は株主総会の決議によって行います。

株主総会による解任はいつでも行うことができ、解任のための特別な理由も必要とされません(ただし、後述のとおり、解任のための正当な理由がない場合には取締役は損害賠償請求権を有します)。解任のための株主総会の決議は取締役の選任の場合と同様、普通決議(過半数の決議)で足ります。

取締役の解任は会社の経営体制に重大な変更を加える行為であることから、解任決議の定足数については3分の1以上としなければならず、定款によってもこれを下回る割合とすることはできません。

また、会社が株主に対して株主総会参考書類の交付をする場合、解任される取締役の氏名と解任の理由を記載する必要があります。

なお、少数株主による取締役選任権の確保の観点から、累積投票によって選任された取締役を解任する際の決議要件は普通決議ではなく特別決議とされています。また、種類株主総会で選任された取締役を通常の株主総会の決議で解任することは原則としてできません。

株主総会の手続きを適法に行うよう注意する

取締役を解任するための株主総会の手続きは会社法の関連規定に従って行う必要があります。この手続きが会社法に違反するようなことがあると株主総会の決議が取り消されるなどして取締役の解任ができないおそれがあります。

株主総会の手続きについてはこちらの記事(株主総会の手続きの流れ)をご参照ください。

解任の通知

上記のとおり取締役の解任は株主総会の決議によって行いますが、解任の効力を発生させるために当該解任の事実を解任された取締役に通知する必要があるか否かについては見解が分かれています。実務上は通知しておくのが安全であるといえます。

解任をするようなケースにおいては会社と取締役が対立していることが多く、取締役は自らの解任を決議する株主総会には出席しないのが通例であると思われます。そのため、取締役は解任されてもその事実を知らないままとなってしまいます。そこで、会社としては解任された事実とともに今後は取締役として活動をしないよう通知しておくべきです。

解任の訴えによる方法

特殊な解任方法として、少数株主が裁判所に訴えを提起することで取締役を解任する方法もあります。これは取締役の職務執行に関し不正の行為又は法令・定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該取締役を解任する旨の議案が株主総会で否決されたときに請求できるものとされています。

しかし、仮に解任の訴えが認められて取締役が解任されたとしても、多数派株主が同一人物を取締役として再任することは妨げられません。また、解任の訴えの係属中に解任の対象となる取締役が任期満了で退任し、再度株主総会で選任された場合には、取締役は新たに株主から信認を得たものとして解任の訴えは却下されます。そのため、解任の対象となる取締役が多数派株主によって支持されている場合、解任の訴えによって目的を達成することは困難であると思われます。

解任された取締役の損害賠償請求権

解任された取締役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対して解任によって生じた損害賠償を請求することができます。

取締役としては任期の期間中は職務の対価を得られるとの期待をしていたはずですから、そのような期待を保護する趣旨で損害賠償請求権が認められています。請求できる損害の範囲については以下のとおりです。

  • 残存任期中に得られたはずの役員報酬
  • 任期満了時に得られたはずの退職慰労金(退職慰労金について定款の定めや株主総会決議等がある場合)

取締役の役員報酬は定款又は株主総会の決議で定める必要があります。そのような手続きを経ない限り、原則として取締役は会社に対して役員報酬を請求することができません。詳しくはこちらの記事(役員報酬を決定・変更するための手続き)をご覧ください。

解任の正当な理由

前述のとおり、解任について正当な理由がある場合には取締役は解任によって生じた損害賠償を請求することができません。

この正当な理由が認められる場合は以下のとおりです。

  • 健康悪化により職務の執行に支障がある場合
  • 法令・定款に違反する不正な行為を行った場合
  • 職務の能力を欠き著しく不適任である場合

上記のほか、取締役の経営判断の失敗が正当な理由に含まれるかについては見解が分かれています。裁判例では、一般論として経営判断の誤りによって会社に損害を与えた場合も正当な理由になると述べたうえで、取締役としての適格性を欠くことや投機性の高い取引の失敗を経営判断の誤りであると指摘して正当な理由ありと認めたものがあります。

実務では、取締役相互間の対立又は株主と取締役の対立が原因で取締役が解任される事例が見られます。そのような場合に正当な理由が認められるか否かはケースバイケースですが、単なる経営方針の食い違いや人間関係の悪化は正当な理由として認められにくいといえます。これに対し、対立の原因として取締役の側に重大な落ち度があるような場合には正当な理由が認められやすくなると思われます。

正当な理由の立証責任は会社側にあります。取締役からの損害賠償請求に対して会社側が正当な理由の立証に成功したときに賠償責任を免れます。

正当な理由について詳しくはこちらの記事(取締役の解任の正当理由に関する実例)をご参照ください。

使用人兼務取締役を解任する場合の注意点

取締役が使用人を兼ねる取締役(使用人兼務取締役)である場合、取締役としての地位と使用人(従業員)としての地位を併有します。そのような使用人兼務取締役との関係を解消するためには、取締役の職を解くことに加え、使用人としての雇用関係を解消する必要があります。雇用関係について、任意に退職に応じれば問題ありませんが、そうでない場合には解雇を検討せざるを得なくなります。この点、解雇には厳しい要件を満たす必要があり、使用人兼務取締役との関係解消は純粋な取締役と比べて容易ではないことに注意が必要です。

解任に伴う登記

解任によって取締役は職を失い、退任することになります。取締役の退任は登記事項の変更となります。そのため、会社は取締役が解任されたことによって退任した旨の変更登記をする必要があります。

代表取締役の解職・解任

平取締役ではなく代表取締役を解職・解任する場合についてはこちらの記事(代表取締役を解職・解任する手続きと注意点)をご参照ください。
      


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