企業による弁護士の利用状況について解説します。

企業による弁護士の利用状況

日本弁護士連合会は中小企業における弁護士ニーズの把握等を目的としてアンケート調査を実施しています（日本弁護士連合会「中小企業弁護士ニーズ調査報告書」（２０１７年８月報告））。本稿では、この日弁連の報告に基づいて筆者が集計した数字等をお示しします。

【総計】弁護士を利用したことがある企業

日弁連の調査報告によれば、中小企業において１０年以内に弁護士を利用したことがある企業の割合は以下のとおりでした。

	１０年以内に弁護士を利用したことがある	１０年以内に弁護士を利用したことがない
総数３８４６社中	４４％	５６％

【業種別】弁護士を利用したことがある企業

業種別にみると以下のとおりです。

		１０年以内に弁護士を利用したことがある	１０年以内に弁護士を利用したことがない
建設業	８４７社	４０％	６０％
製造業	７２３社	４０％	６０％
情報通信業	１０８社	５５％	４５％
運輸業、倉庫業	１９９社	５６％	４４％
卸売業、貿易業、商社	５６６社	４４％	５６％
小売業	４５２社	３３％	６７％
飲食店、宿泊業	７３社	５７％	４３％
不動産業、金融業	１５６社	７５％	２５％
サービス業	４１１社	４８％	５２％
その他	２３６社	４５％	５５％

上の表からすると、弁護士を利用したことがある割合が高い業種としては、情報通信業（５５％）、運輸業・倉庫業（５６％）、飲食店・宿泊業（５７％）、不動産業・金融業（７５％）となっています。

逆に、顧問弁護士がいる割合が低い業種としては、建設業（４０％）、製造業（４０％）、小売業（３３％）となっています。

【売上別】弁護士を利用したことがある企業

売上別にみると以下のとおりです。

		１０年以内に弁護士を利用したことがある	１０年以内に弁護士を利用したことがない
１億円未満	８２３社	２７％	７３％
１億円～３億円	１１２１社	３３％	６７％
３億円～５億円	５２９社	４２％	５８％
５億円～１０億円	５６１社	５５％	４５％
１０億円～２０億円	３５５社	６３％	３７％
２０億円～３０億円	１３９社	７２％	２８％
３０億円超	２６５社	８６％	１４％

上の表からすると、売上規模が大きい企業ほど弁護士を利用したことがある割合が高くなることが分かります。特に売上が５億円以上になると半数以上の企業が弁護士を利用したことがあることになります。

【従業員別】弁護士を利用したことがある企業

従業員数別にみると以下のとおりです。

		１０年以内に弁護士を利用したことがある	１０年以内に弁護士を利用したことがない
５人以下	９５６社	３２％	６８％
６人～１０人	７５９社	３５％	６５％
１１人～２０人	７５２社	３７％	６３％
２１人～５０人	７８０社	５３％	４７％
５１人～１００人	３０４社	６７％	３３％
１０１人～３００人	２１９社	８１％	１９％
３０１人以上	５８社	９０％	１０％

上の表からすると、従業員数が多い企業ほど弁護士を利用したことがある割合が高くなることが分かります。特に従業員数が２１人以上になると半数以上の企業が弁護士を利用したことがあることになります。

弁護士を利用したきっかけ

弁護士を利用したきっかけは以下のとおりです。

１　顧問弁護士がいた（４７％）

２　取引先や親会社、友人・知人からの紹介（４１％）

３　弁護士が友人・知人にいた（１２％）

４　自治体・商工会議所等の法律相談で相談した（４％）

５　インターネットで検索（２％）

６　弁護士会の紹介制度を利用した（２％）

７　事務所の広告を見て（１％）

８　その他（５％）

弁護士の利用を決定した理由

１　紹介者が信用できる（４１％）

２　弁護士の専門性・力量（２９％）

３　弁護士の人柄（２７％）

４　弁護士報酬額が妥当、割安（１８％）

５　対応スピードの早さ（１８％）

６　自社業界や業務を理解している（１７％）

７　事務所が近い（９％）

弁護士を利用しなかった理由

１　弁護士に相談する問題とは思わなかった（５２％）

２　頼みにくい・相談しにくい（４５％）

３　弁護士報酬が高い・分かりにくい（３０％）

４　弁護士にツテがなかった（１５％）

５　弁護士以外の資格者の方が相談しやすい（１５％）