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会社法

書面決議による株主総会の実施(書式例付き)

投稿日 : 2018年05月24日

株主総会の開催を省略する方法について解説します。

株主総会の開催を省略する方法

会社法では、株主総会を実際に開催し、議場において賛否を問う決議を行うことが原則形態とされています。しかし、株主が1名又は少数の場合であって、株主の全員が議案に賛成することが見込まれているときには、実際に株主総会を開催するのは非効率であるといえます。そこで、会社法では取締役又は株主の提案について総株主の同意があった場合には当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすとしています。この同意は書面又は電磁的記録で行う必要があります。

上記の方法で株主総会の開催を省略し、書面ベースで決議があったと同様の法的効果を得ることを、実務上「みなし決議」又は「書面決議」などといいます。決議の対象に制限はなく、普通決議事項はもちろん、特別決議事項や特殊決議事項も書面決議の方法によって決議することができます。

同様に、会社法上、株主総会に報告すべきとされている事項について、総株主から当該事項について報告することを要しないことについての同意があった場合には当該事項の株主総会への報告があったものとみなすとしています。そのような報告事項としては、事業報告、計算書類の内容、監査結果の報告があります。株主の同意は書面又は電磁的記録で行う必要があることは決議の省略と同様です。

会社法の関連条文

第319条(株主総会の決議の省略)
1 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
2 株式会社は、前項の規定により株主総会の決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
3 (略)
4 (略)
5 第一項の規定により定時株主総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなす。

第320条(株主総会への報告の省略)
取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

書面決議(みなし決議)を行うための手続き

書面決議は、①取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案すること、②株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をすること、によって成立します。

上記のうち、①の提案は取締役と株主のいずれかが行います。取締役が提案を行う場合、提案に先立って取締役会において株主総会の目的事項と書面決議を行うことについて決議をします(取締役会を設置していない会社の場合は取締役の決定)。そのような取締役会の決議に基づいて代表取締役が株主に対して提案を行います。これに対し、株主が提案する場合には取締役会の決議は不要です。

次に、株主の全員から②の同意の書面等を取得します。可能であれば事前に会社から株主に対して説明を行い、提案事項について同意が見込めることを確認しておくのが安全です。

提案書兼同意書の書式例

書面決議に関する提案と同意について定まった書式はありません。株主総会の目的事項とそれに対する株主の同意が明記されたものとします。例えば以下のとおりとすることが考えられます。



(書式)

〇年〇月〇日

株主各位

東京都〇〇区〇〇
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇

第〇回定時株主総会 提案書兼同意書

当社は、下記の各事項につき株主総会の目的事項として提案します(以下、「本提案」といいます)。また、当社の第〇期(〇年4月1日から〇年3月31日まで)に係る事業報告、計算書類及び監査報告を本書面に添付します。

本提案について同意をしていただける場合には、下記の同意欄に署名又は記名押印のうえ、当社宛に本書面を返送してくださるようお願い申し上げます。

なお、本提案について全ての株主の同意が得られた場合、会社法の関連規定に基づき、株主総会の決議及び株主総会への報告があったものとみなされます。株主総会を開催することはいたしませんのでご留意ください。

株主総会の目的事項

1 報告事項

当社の第〇期の事業報告、計算書類及び監査報告については、その内容の通知を受けたので株主総会に報告することを要しないこと

2 決議事項

第1号議案 計算書類の承認の件
当社の第〇期の計算書類を承認すること

第2号議案 剰余金の配当の件
以下のとおり当期の期末配当を行うこと
(1) 当社普通株式1株につき金〇円  総額〇〇円
(2) 剰余金の配当が効力を生じる日 〇年〇月〇日

第3号議案 取締役〇名選任の件
当社の取締役〇名が任期満了となるため、下記の者を取締役として選任すること
取締役  〇〇○○
取締役  〇〇○○

以上

———————————————————————–

同意欄

上記の株主総会の目的事項に関する会社提案につき同意します。

〇年〇月〇日

(株主)  住所 東京都〇〇区〇〇
氏名 〇〇 〇〇  印



上記の書式例のファイルを以下に添付します。
定時株主総会_提案書兼同意書
(クリックするとWordファイルが開きます)

提案書と同意書を別ファイルとする場合は以下のとおりとなります。
定時株主総会_提案書
定時株主総会_同意書
(クリックするとWordファイルが開きます)

株主総会議事録の作成

書面決議を行った場合、株主総会議事録を作成します。この点、書面決議では現実に会議を開催するわけでないので厳密には「議事録」ではありませんが、便宜上、通常の株主総会と同様、決議事項等についての記録を「議事録」としています。

書面決議における議事録に記載すべき事項は以下のとおりです。

【決議事項がある場合】
イ 株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした者の氏名又は名称
ハ 株主総会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

【報告事項がある場合】
イ 株主総会への報告があったものとみなされた事項の内容
ロ 株主総会への報告があったものとみなされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

株主総会議事録の書式例

書面決議の場合の議事録の例は以下のとおりです。定時株主総会において決議事項及び報告事項があることを前提としています。



(書式)

第〇回定時株主総会 議事録
(書面決議)

当社の第〇回定時株主総会に関し、当社の代表取締役○○は株主に対して下記の各事項を株主総会の目的事項として提案し、議決権を行使することができる株主の全員から同意の意思表示があったので、株主総会の決議及び株主総会への報告があったものとみなされた。

第1 株主の状況

議決権を行使することができる株主の総数 〇名
議決権を行使することができる株主の議決権の総数 〇個

第2 株主総会の目的事項

1 報告事項

当社の第〇期の事業報告、計算書類及び監査報告については、その内容の通知を受けたので株主総会に報告することを要しないこと

2 決議事項

第1号議案 計算書類の承認の件
当社の第〇期の計算書類を承認すること

第2号議案 剰余金の配当の件
以下のとおり当期の期末配当を行うこと
(1) 当社普通株式1株につき金〇円  総額〇〇円
(2) 剰余金の配当が効力を生じる日 〇年〇月〇日

第3号議案 取締役〇名選任の件
当社の取締役〇名が任期満了となるため、下記の者を取締役として選任すること
取締役  〇〇○○
取締役  〇〇○○

第3 株主総会の決議があったものとみなされた日

〇年〇月〇日

以上のとおり、会社法の関連規定により、株主総会の決議及び株主総会への報告があったものとみなされたので、代表取締役〇〇が本議事録を作成する。

 〇年〇月〇日

株式会社〇〇
代表取締役 〇〇 印



上記の書式例のファイルを以下に添付します。
定時株主総会_議事録
(クリックするとWordファイルが開きます)

記録の保存

書面決議の方法により株主総会の決議及び株主総会への報告があったとみなされた場合には、株主の同意書面を10年間会社の本店に備え置かなければなりません。株主や債権者等は、会社の営業時間中は決議事項に係る同意書面の閲覧又は謄写を請求することができます。

定時株主総会の終結時期

書面決議の方法により定時株主総会の目的である事項の全てが決議されたとみなされた場合には、その時に当該定時株主総会が終結したものとみなされます。この株主総会の終結時が任期の終期となっている取締役は任期満了により退任することになります。

まとめ

書面決議は簡易な方法で株主総会の決議及び株主総会への報告を行うことができる点で便宜であるといえます。他方で、書面の記載事項等のミスが決議の瑕疵につながるおそれがあり、注意が必要です。
       


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