弁護士 赤塚洋信 公式サイト トップ

  • 弁護士紹介
  • 業務案内
  • 実 績
  • 弁護士費用
  • ご相談の流れ
  • アクセス・お問い合わせ
  • 法務コラム

契約書

注文書と請書による契約の成立

投稿日 : 2018年02月01日

注文書と請書による契約の成立について解説します。

注文書

契約の成立に必要な申込みと承諾

契約の成立には一方当事者による申込みと、他方当事者による承諾が必要です。この申込みと承諾があることによって意思の合致があったといえ、契約が成立したとされます。

この申込みと承諾が書面でなされることは求められていません。口頭でなされた申込み・承諾であっても有効な契約となります(改正民法においては、契約の成立には書面は不要であることが明文で規定されました)。このように、申込みと承諾さえあれば契約書を作成しなくても契約が成立します。

しかし、現実には取引実務で口頭のみで済ませることは多くありません。取り急ぎ口頭で発注内容を伝えることがあるとしても、後で取引書類を送るなどして記録に残すことが一般的です。

注文書と請書による取引の成立

注文書と請書を交わすことによる取引の場合、注文書が申込みであり請書がそれに対する承諾となります。そのため、これらの取引書類によって契約が成立したことになります。なお、注文書と請書ではなく、1通の契約書で契約が締結されている場合、当該契約書が契約の成立の根拠となります。この場合、何が申込みで何が承諾かは観念しにくいのですが、契約書によって直接法律行為がなされたと考えます。

注文書と請書を用いる前提として契約当事者間で取引基本契約書を締結していることがあります。取引基本契約を締結している場合、当該基本契約で定めた取引条件がその対象となる個々の個別契約に適用されます。注文書と請書によって成立する契約がこの個別契約に該当します。

もっとも、取引基本契約を締結していることが注文書と請書による個々の契約の成立要件ではありません。取引基本契約がなくとも注文書と請書によって契約内容が特定できるのであれば有効に契約が成立します。

注文書のみで契約が成立する場合

(1)当事者間で注文書のみで契約が成立するとの合意がある場合

上で述べた取引基本契約において、「買主が注文書を売主に提供することにより個別契約が成立するものとする」旨の規定を置いている場合があります。このような規定は買主側(発注者側)に有利な規定といえますが、このような規定があれば注文書のみで契約が成立します。

(2)発注に対する諾否の回答を怠った場合

会社間の取引においては商法が適用されます。商法では、隔地者間の取引に関して承諾の期間を定めないで発注(契約の申込み)がなされた場合において、当該発注を受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときには、その発注は効力を失うとされています。そのため、例えば、自社が取引先から発注を受けた場合であっても、請書を出さないでいたときには、発注は効力を失い契約は成立しません。

しかし、上記の規定とは異なる重要なルールもあります。それは、得意先(平常取引をする者)が自社の営業の部類に属する発注(契約の申込み)をした場合です。ポイントは、常日頃取引をしている得意先であること、及び、発注が自社の取扱い商品・サービスに関するものであることです。これらの要件に合致する場合、自社は遅滞なく発注に対する諾否の回答をしなければなりません。かかる諾否の回答を怠った場合、自社は発注を承諾したものとみなされます。すなわち、無回答は承諾として扱われ、契約が成立してしまいます。上記の規定(発注は効力を失う)と真逆の結論になるということです。

多くの場合、自社の取扱い商品・サービスに関する契約が成立することは問題ない場合が多いでしょうが、何らかの理由で発注を受けられないような状況である場合、契約が成立してしまうことは不都合となるので注意が必要です。

注文書・請書だけでなく可能な限り取引基本契約を締結すべき

注文書と請書だけで取引を行うのは簡便であり、正式な契約書を作成するよりも手間がかからないというメリットがあります。しかし、何かあったときに紛争解決の指針がなく、トラブルが深刻になるおそれがあります。例えば、製品名だけを特定して売買を行っていたところ、後々買主が求める品質基準に合致していないことが判明したとします。その場合、そのような品質基準が契約内容であったかが明らかでなく、いずれが責任を負うかを巡ってトラブルになります。このようなトラブルは契約で仕様・品質を合意しておくことで防止できるはずです。

また、検査の時期や方法を決めていなかった場合、商法の規定が適用されますが、商法上、買主は遅滞なく目的物を検査する義務を負い、不具合を発見したときには直ちに売主に通知をする義務を負います。かかる規定が取引の実情に合致しないことはままあると思われます。

工事請負契約の場合、法律上14項目にわたる事項を記載しなければなりませんが、注文書と請書の形式では漏れが生じる可能性が高くなると思われます。同じことは下請法が適用される契約についても言えます。

このように、注文書と請書のみで取引を続けることは、将来の紛争を未然に防ぐという意味でも、コンプライアンスの観点からもリスクがあるといえます。会社の取引の実情にもよりますが、可能な限り取引基本契約を締結しておくことが望ましいといえます。

【次にお読みいただきたい記事】
契約書を作成・チェックする場合の注意点
  


契約書に関して他にもお役に立つ記事を掲載しています。
【記事カテゴリー】契約書

契約書や取引について弁護士に相談することができます。
【業務案内】契約書の作成・チェック
【業務案内】ビジネスの適法性・コンプライアンス

TOP

TOP