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契約書

契約書への押印の法的効果と契約に使用できる印鑑

投稿日 : 2018年01月23日

契約書に押印することによる法的効果と企業間の契約に使用できる印鑑について解説します。なお、分かりやすさの観点から本稿では印鑑と印章(ハンコ)を厳密に区別せずに使います。

契約書の押印

契約書への署名又は押印の必要性

契約書を締結する場合には両当事者(会社の場合は権限者)が署名又は押印します。

「署名」とは手書きで自らの氏名を書き記すことです。これに対し、署名以外の方法で氏名を表示すること、例えばゴム印を使う又はプリンターで印字する等の場合は「記名」といい、法的な効果が異なります。押印は文字どおり印鑑で文書に印影を残すことです。

契約書にはそれが締結されたものであることを示すために署名又は押印がなされます。署名のみの場合、署名に加えて押印もなされる場合、記名と押印がなされる場合、があります。これらのいずれかがあって初めてその契約書が締結されたとして扱われます。そのため、署名又は押印することは契約書に法的効果を付与する重要な行為であるといえます。

ビジネスの現場で最も多く見かけるのは記名と押印がなされるパターンです。以下の例のとおりです。

契約書の記名押印

記名押印ではなく署名と押印がなされることもありますが、これはおそらく文書作成時に締結権限者が明らかでないために記名欄をブランクとしておき、後から氏名を手書きで補充したようなケースではないかと思います。会社間の契約で署名のみがなされることはほとんどありません。会社間の契約で署名のみがなされるのは英文契約を締結する場合です。

署名又は押印による法的効果

法律上、署名又は押印には特別な効果が与えられています。

訴訟において契約書を証拠提出する際、その文書が真正に成立したこと(すなわち、文書の名義人の意思に基づいて作成されたこと)を示す必要があります。この点に関して民事訴訟法では以下のとおり規定されています。

私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。(民事訴訟法第228条4項)

上に引用した規定があることから、契約書等の私文書に署名又は押印がある場合には、文書が真正に成立したものと推定される、すなわち、訴訟で用いるための証拠としての適格性を有することとになります。

なお、当然のことながら押印はその名義人の意思に基づいてなされなければならず、名義人が知らないところで他人が勝手に押印した場合には有効な押印とはいえません。しかし、その名義人の印鑑で押印されてさえいれば、通常は名義人の意思に基づいて押印されたと推定されます(第1段の推定)。これを前提に上記の規定を適用すると文書の成立の真正が推定されます(第2段の推定)。これを法律用語で二段の推定と呼びます。この二段の推定が働くことにより、契約書の成立の真正を主張するためには、「押印されている印影が名義人の印鑑と同一であること」を示すだけで足り、「名義人の意思に基づいて押印されたこと」まで示す必要はありません。

上記のとおり、日本では押印をすることは重要な意思表示であると考えられており、法律上も特別な効果を与えられています。押印にそのような法的効果が与えられている裏返しとして、印鑑の管理を適正にしておかなければ思わぬトラブルに巻き込まれるリスクがあるといえます。

会社間の契約で用いられる印鑑

会社間の契約で契約で用いられる印鑑について説明します。なお、契約を締結する権限者についてはこちらの記事(契約を締結する権限者)をご覧ください。

(1) 代表者印

代表取締役が会社を代表して契約を締結する場合、通常は代表者印が用いられます。代表者印は言わば個人の実印の会社版であり、法務局に印影が登録されています。多くの場合、印影の外枠には会社名が表示され、内枠には代表取締役印という文字が表示されます。

この代表者印によって押印がなされ、かつ当該代表者印に係る印鑑証明書の提出を受けておけば、その会社が契約したことを争うことは事実上不可能になります。そのため、これが会社間で契約を締結する際には最も安心できる方法であるといえます。もっとも、実務においては代表取締役が押印するとしても印鑑証明書まで提出を求めるのは特に慎重に契約を締結したい場合に限られるといえます。

(2) 銀行印

銀行印はその名のとおり銀行等の金融機関との取引にのみ用いる印鑑です。銀行印は金融機関ごとに登録し、金融機関はそれを照合することで預金者による真正な取引であることを確認します。多くの会社では専用の銀行印を作成して使っています。そのような場合、金融機関ではない普通の会社との取引において銀行印を使うことはありません。

(3) 役職印

役職印は部長や支店長等の役職者が持っている印鑑です。社内の決裁に用いられるほか、役職者が会社のために契約を締結する場合にも用いられます。

(4) 角印(社判)

角印は会社が作成した書面であることを示すもので、請求書や領収書等の書類に用いられます。特定の役職者とは紐づけられていませんが、誰でも使えるわけではなく、何らかの社内ルールに従って押印する場合が多いといえます。

角印は会社が作成した正式な書類であることを表示するものではありますが、角印のみで契約書に押印をすることは通常ありません。仮に契約書に角印のみが押印されていた場合、契約書の有効性に疑義が生じると思われます。先に述べたとおり、「押印されている印影が名義人の印鑑と同一であること」を示すことができれば、法的な証拠としての適格性を有することになります。しかし、角印は会社の印鑑ではあっても特定の誰かの印鑑ではありません。代表者や役職者の記名の右横に角印が押印してあっても、確かにその人の印鑑だということはできないはずです。そうすると、契約書としての有効性が問題になってくるのです。

(5) 個人用の認印、シャチハタ印

会社間の契約書を締結する際にこれらを使って押印することは通常ありません。
  


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