契約書
契約書を作成すべき3つの理由
投稿日 : 2018年01月20日契約書を作成するべき理由(メリット)について解説します。
契約書を作成することには、以下のとおり大きく分けて3つの理由(メリット)があります。
契約書を作成すべき理由① 合意したい内容を具体化し交渉を促進する
何らかの取引について交渉する場合、どのような商品・サービスを購入するのか、代金はいくらになるのか、保証などの付随的な条件はどのようになるのか等をお互いに提案し、合意を目指します。この交渉の過程で、契約書が交渉を促進する役割を果たします。すなわち、自社が最終的に合意したい内容を契約書の案(ドラフト)という形で相手方に提示することで、その内容が具体的に伝わります。それによって相手方としても提案された事項についての理解が深まり、検討がしやすくなります。
例えば、口頭でのやりとりで取引内容が固まったと思っていたところ、「付属品は別売りだった」「消費税込みだと思っていたら税抜価格だった」「支払期限について誤解があった」などといった事態は起こりがちだと思います。これらは単純な例ですが、重要な取引で内容が複雑な案件の場合、口頭での協議のみならず、提案内容を書面で伝えることが交渉のプロセスにおいて重要な役割を果たします。そのような書面としては、提案書のような形式であったり、より簡易にメールで伝えることもあるでしょうが、大枠が固まった後は契約書の案を示すのが交渉を進めるうえで効果的です。
契約書には主たる取引内容が記載されることはもちろん、付随的な条件も含めて両当事者の権利義務が記載されます。契約書の案を作成する側にとっても、それを受け取る側にとっても、契約書というフォーマットを用いることで取引内容をより精緻化し、また、具体的に検討することができようになります。さらに、契約書というオフィシャルな文書が出てくることでクロージングに向けた機運が高まるという心理的な効果も無視できないと思われます。
上記のように、契約書は単に交渉を記録化するという役割だけではなく、その作成過程を通じて交渉を促進する役割を果たすのです。このような役割についてはあまり意識されていませんが、契約書を作成することの重要な意義・メリットであるといえます。
契約書を作成すべき理由② 相手方が合意内容を任意に履行することが期待できる
合意した事項を正式な契約書の形式としておくことで、相手方が合意内容を任意に履行することが期待きます。
法律上、契約は口頭でも行うことができます。しかし、口頭でなされた契約は文書化された記録がないため、その内容を正確に確認することができません。後日、言った言わないのトラブルになりやすく、自社が期待していたとおりに契約が履行されることについての不確実性が大きいといえます。また、仮に契約が守られなかったとしても、契約書がなければ相手方に対して法的手段をとることは実際上難しいといえます。
それに対し、契約書を作成すればその内容は動かしがたい書面として記録化されます。その内容はいつでも確認することができ、口頭での契約にありがちなトラブルを防止できます。
さらに、これが重要な点ですが、真っ当な会社であれば「契約は守らなければならない」と考えるはずです。契約書を締結することはその内容に関して会社として正式なコミットメントをすることになります。契約書には権限を持った役職者が責任を持って押印するはずであり、それは双方が尊重すべき重たいものです。そして、会社は契約によって法的に権利を有し、義務を負います。
正式に締結された契約を守らないとなるとビジネス上の信用を失ってしまいます。また、場合によっては契約相手から訴えられることもあります。そのため、契約書を締結することにより、取引について相手方が合意した内容を遵守し、任意に履行することが期待できるのです。
これは、契約が当事者の行動指針として機能する場面です。そのような機能を十分に果たすためには、合意事項を契約書に落とし込み、正式に締結することが必要となります。
下記の理由③で述べるとおり、法的手段を通じて強制的に契約内容を実現する役割も重要ではありますが、世の中で締結された契約のうち訴訟に持ち込まれるケースは極々わずかです。ビジネスの日常における契約書のほとんどが約束どおり履行され、無事に取引が行われます。その意味で、契約書が行動指針として働くこと、すなわち、合意内容の履行を促す機能は実務における契約の中核的な役割であるといえます。
契約書を作成すべき理由③ 法的手段を通じて契約内容を実現できる
これはタイトルどおりですが、契約相手が契約を守らなければ、自社は契約相手を訴えることができます。そして、裁判において勝訴すれば判決の内容を強制執行することができます。
実際には訴訟を提起して判決を得るのは手間もコストもかかるので、契約違反があったとしても常に訴訟に至るわけではありません。もっとも、契約に違反すれば相手方から訴えられる可能性があるということは、当事者にとって契約を守ろうとする動機付けになります。契約内容を訴訟を通じて強制的に実現できるということは、平時において当事者が契約を守ることを担保しているといえます。
まとめ
上に述べたとおり、契約書を作成することには3つの大きな理由(メリット)があります。もちろん、契約書を作成するのは相応の作業なので取引全てにおいて契約を作成するのは現実的ではありません。とはいえ、少なくとも会社にとって一定以上のインパクトがある取引、例えば金額が大きい取引や、リスクの大きい取引等の場合には契約書を作成しておくのが安全であり、強く推奨されるといえます。
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