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契約書

弁護士に契約書のチェックを依頼する場合の注意点

投稿日 : 2019年04月04日

取引先から提示された契約書のチェックを弁護士に依頼する場合の注意点を解説します。特に重要と思われる点に絞って説明したいと思います。

取引の全体像や位置付けについて説明する

弁護士が契約書をチェックする場合、契約書だけでそのリスクの評価や修正の提案をすることはできません。依頼者が行おうとしている取引がどのようなものであり、ビジネス全体でその取引や契約書がどのような位置付けにあるのかを知っておく必要があります。

そのため、弁護士に契約書のチェックを依頼する立場の会社としては取引に関して以下のような情報を伝えておく必要があります。
(1)関連する取引を含めた商流やスキームの全体像
(2)対象となる契約が全体の中でどのような位置付けにあるのか
(3)契約の相手方との力関係や過去の取引実績、これまでの商談内容
(4)対象となる契約によって自社がどのような成果を得たいのか
(5)取引の規模、金銭的なインパクト
(6)業界における取引慣行

上記のような情報があって初めて対象となる契約に含まれる法的なリスクを評価することができ、また、修正すべき点を検討することができるようになります。逆に、これらの情報を弁護士に伝えないままに契約書のチェックを依頼してもあまり意味がないともいえます。

依頼事項や自社の要望を弁護士に伝える

契約書のチェックにあたって何を弁護士に依頼するかを明確に伝えます。「契約書のチェック」といっても様々な業務のスコープがあります。典型的には、①契約に含まれるリスクの指摘と、②自社にとって望ましい修正案の作成です。

修正案の作成を依頼する場合であっても、闇雲に「リスクが少なくなるようにお願いします」というだけでは弁護士としても対応しにくいものです。そこで、弁護士に依頼する前に一度契約書案に目を通し、可能な限り現時点の契約書案に対する意見や修正の方向性を伝えるようにすべきです。

例えば、「こうなったときにはこういう結論になるようにしたい」「この内容は不都合だ」などのコメントを伝えることで、弁護士としても依頼者の希望に沿った修正を進めやすくなります。

その契約相手で良いか、相手方の提示した契約書を使うべきかを検討する

弁護士に契約のチェックを依頼する場合、「その契約相手と」、「相手方の提示した契約書で」、契約を締結することを所与の前提として依頼されることがほとんどです。

しかし、対象となる取引を行うにあたって契約の相手方を誰にするのが適切であるのか、検討すべき場合があります。例えば相手方の会社が事業分野ごとに子会社を設立している場合、子会社と親会社のどちらを契約相手とするべきかは事案によって異なります。

また、相手方の提示した契約書をベースとするべきか、自社から契約書を提示するべきかも考えどころです。出発点をどちらにするかで契約全体のトーンや修正作業のボリュームが大きく異なってくるからです。

相手方から提示された契約書のクオリティが低かったりすると、原型をとどめないほどの修正が必要になることもありますが、それは非常に非効率であり、最初から適切なフォームを出発点にするのが良いはずです。

契約書のチェックに取り掛かる前に上記のような事項をクリアにしておくべきであり、そのような点も弁護士に相談することができます。目の前にある契約書を使うことを前提とせず、より大局的な視点からアドバイスを求めることもご検討ください。

契約のスケジュールや希望納期を伝える

取引開始やサービスのローンチの時期が決まっている場合、いつまでに契約を締結しなければならないという期限があるはずです。また、契約交渉のやりとりにおいては修正案を相手方にタイムリーに戻す必要もあります。

そのような契約のスケジュールや修正案の希望納期を伝えることも重要です。また、納期を伝える際には、自社において弁護士が加えた修正内容を確認するための時間も考慮する必要があります。

なお、弁護士にスケジュールを伝える場合、「なるべく早めにお願いします」と伝えるよりも、「〇月〇日までにお願いします」と伝える方がベターです。

弁護士報酬の合意

契約書のチェックについての弁護士報酬の定め方は様々であり、一概にどのような方法が良いとは言えません。また、安ければ良いというものでもありません。経験ある弁護士が時間をかけて検討するのであれば相応の費用がかかるはずだからです。どのような定め方にするにせよ、報酬について事前に弁護士と協議し、合意しておく必要があります。

時間報酬制(タイムチャージ)を用いる場合には業務が完了しないと報酬額が確定しませんが、その場合であっても見積もりを得ておくのが望ましいと思われます。

依頼者の方の立場からすると、法務にかけられる予算の制約があったり、想定よりも高額な報酬を支払うのには抵抗があるはずです。報酬について弁護士に意見を言いにくい向きがあるかも知れませんが、報酬の協議の際には自社の予算感も積極的に伝えるのが双方にとって良いと思います。

弁護士の修正案を必ず自社でチェックする

弁護士が契約書の修正案を作成した後、必ず自社で修正内容を確認するようにしてください。弁護士による修正案はあくまでも「依頼者にお勧めする提案」であって、それを採用するか否かは依頼者の判断です。

弁護士は法律や契約の専門家ではありますが、依頼者のビジネスについてはあくまでも部外者です。依頼者の意向を汲み取る努力はしますが、自ずと限界があります。そのため、弁護士が加えた修正に自社の希望とマッチしない部分があったり、契約の相手方との関係性からして提案を控えるべき内容が含まれているおそれがあります。また、場合によっては自社がお願いした修正のリクエストが反映されずに漏れているかも知れません。

そこで、弁護士から修正案が戻ってきた段階で必ず修正内容を確認し、最終的にどのような内容で相手方に提示するかを判断する必要があります。


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