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会社法

取締役会の権限・役割

投稿日 : 2019年05月02日

取締役会は会社の業務執行について意思決定を行う合議体であり、経営の中核を担う機関です。本稿ではそのような取締役会の権限や役割について解説します。

取締役会と株主総会の権限配分

取締役会は株主総会の決議事項とされているものを除き、会社の経営に関する重要な事項について広く決定権を有します。

会社における最も基本的な意思決定機関は株主総会ですが、取締役会設置会社においては会社法上の様々な決定権限が株主総会ではなく取締役会に与えられています。また、株主総会が決議できる事項は法令又は定款に定めのある事項に限定されています。そのため、取締役会設置会社においては会社経営に関して取締役会が果たす役割が大きいといえます。そのような権限配分がなされているのは、会社の所有と経営を分離して会社の業務執行については取締役会に委ねるべきとの考え方に基づくものです。

取締役会の権限・役割に関する会社法の規定

取締役会の権限・役割に関する会社法の規定は以下のとおりです。

第362条(取締役会の権限等)

1 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない
(以下略)

取締役会の権限・役割とされている事項

上記の規定にあるとおり、取締役会は、会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職をその職務として行います。

(1)業務執行の決定

業務執行の決定とは、会社の業務に関する意思決定です。会社の業務には事業計画の立案、製品の製造、サービスの提供、営業活動、人材管理、資金調達などが含まれますが、これらに関する方針を策定し、また、重要な個別事案について判断を下すのが業務執行の決定です。

(2)取締役の職務の執行の監督

取締役の職務の執行の監督とは、個々の取締役が適正に職務を行っているかを監督することです。特に、業務執行権限を有する代表取締役や業務執行取締役による業務執行を監督することが重要となります。

(3)代表取締役の選定及び解職

代表取締役の選定及び解職は、文字どおり代表取締役を誰にするかを決定し、不適任であれば解職することです。代表取締役は取締役の中から選定されます。

上記の取締役会の権限・役割を簡単に図示すると以下のとおりです。

取締役会が決定しなければならない重要事項

取締役会は一定の範囲で業務執行の決定を代表取締役や経営会議等の機関に委ねることができます。もっとも、会社にとっての重要事項についてはそのような委任をすることができず、取締役会において決定しなければならないとされています。取締役会が決定しなければならない重要事項は以下のとおりです。

(1)重要な財産の処分及び譲受け

重要な財産の処分及び譲受けは、会社の財務状況や事業活動に営業を及ぼすことから取締役会の決議によって決定されなければならないとされています。

重要な財産の処分に該当するかどうかについては全ての会社に適用される一律の基準があるわけではなく、個々の会社の事情に応じて異なります。判例では、財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきとしています。

(2)多額の借財

借入等の金融取引をすることは資産の処分と同様に会社にとって重要な事項です。

多額の借財に該当するか否かについても、重要な財産の処分と同様、会社の事情に応じた個別判断となります。裁判例では、当該借財の額、その会社の総資産及び経常利益等に占める割合、当該借財の目的及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断されるべきであるとしています。

(3)支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

会社の幹部職員を誰にするかは重要な人事であり、取締役会の決議によって決定されなければならないとされています。

重要な使用人の例としては、執行役員、支店長、支社長、本社の部長などが挙げられます。執行役員に専務・常務等の肩書を付することも取締役会決議事項と解されます。(なお、本号の直接の対象となるのは使用人のみであり、取締役は対象ではありませんが、取締役を役付取締役にすることも後述する「その他の重要な業務執行の決定」として取締役会で決議すべきと解されます。)

(4)支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

会社の組織や体制に変更を加えることは経営事項として取締役会に権限が留保されています。

その他の重要な組織が何であるかは個々の会社の事情に応じて異なりますが、例えば経営会議、常務会、役付取締役制度、重要な子会社などが該当すると考えられます。また、会社内部の部門や事業部を再編成することも重要な組織の変更として取締役会の決議を要すると考えられます。

(5)社債に関する事項

社債に関する事項、具体的には、会社法第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項は取締役会の決議によって決定されなければならないとされています。

上記の事項に含まれるものとしては、募集社債の総額、2以上の募集に係る募集事項の決定の取締役への委任、募集社債の総額の上限、利率の上限等、払込金額の総額の最低金額等、があります。

(6)内部統制システムの構築

いわゆる内部統制システムの構築に関する事項も取締役会の決議によって決定されなければならないとされています。

内部統制システムとは、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備を意味します。

大会社である取締役会設置会社においては、取締役会の決議によって内部統制システムについて決定をする必要があります。

(7)取締役の責任の免除

監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においては、一定の要件を満たす場合には取締役の任務懈怠責任の一部を免除することができる旨を定款に定めることができます。この責任の免除に関する決定は取締役会設置会社においては取締役会の決議によって行うこととされており、これを取締役に委任することはできません。

(8)その他の重要な業務執行の決定

上記(1)ないし(7)で列挙された事項はあくまでも例示であり、取締役会の決議によって決定しなければならない事項はこれらに限られるものではありません。これらに準ずる程度に会社にとって重要な事項も取締役会の権限事項であり、取締役に委任することはできません。

(9)会社法の個別の規定で取締役会が決定するとされている事項

会社法では個別の規定で取締役会が決定するとされている事項があります。主なものとして以下のような事項は取締役会の決議により決定するとされています。
・ 譲渡制限株式の譲渡承認(第139条1項)
・ 自己株式の取得価格等の決定(第157条2項)
・ 公開会社における株式の募集事項の決定(第201条1項)
・ 株主総会の招集の決定(第298条4項)
・ 計算書類等の承認(第436条3項)

取締役会から特別取締役への決定の委任

取締役会設置会社が、①取締役の数が6人以上、及び、②取締役のうち1人以上が社外取締役であること、という要件を満たす場合には、取締役会は一定の事項の決定を予め選定した特別取締役(3人以上)に委任することができるとされています。これは、一定の業務執行について迅速に意思決定をしたいというニーズ等に応えるための制度とされています。

特別取締役に委任することができる事項は、重要な財産の処分及び譲受けと、多額の借財です。特別取締役はこれらの事項につき、議決に加わることができるものの過半数が出席し、その過半数によって決定することができます(決議要件の加重も可能)。特別取締役の制度は実務ではあまり活用されていないようです。

まとめ

上記のとおり取締役会は会社の経営に関する重要な事項について広く決定権を有します。これらの事項について取締役会の決定を欠いたまま業務執行を進めると当該行為の有効性が問題となるので注意が必要です。

 

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