会社法
取締役の辞任とその注意点
投稿日 : 2018年03月14日取締役の辞任に関する会社法上の規定や判例について解説します。
取締役の辞任
辞任とは取締役の自発的な意思によって取締役の職務から退くことをいいます。
取締役と会社の関係は民法の委任に関する規定に従うとされています。委任関係においては各当事者がいつでもその解除をすることができるとされています。そのため、取締役は会社との委任関係を一方的に終了させることができます。辞任の理由は特に問われませんし、会社側の承諾も不要です。何らかの理由で取締役としての職務を果たせない(例えば健康悪化など)場合に辞任をすることになります。辞任の手続きとして、通常は辞任届を会社(その代表者である代表取締役)に提出することになります。
辞任する取締役が留意すべき点
(1)辞任の時期によっては会社に対して損害賠償義務を負うこと
上記のとおり取締役はいつでも辞任することができます。しかし、取締役が会社にとって不利な時期(不利益となるようなタイミング)で辞任した場合において会社に損害が発生したときには、辞任した取締役は会社の損害を賠償する責任を負います。どのような場合が不利な時期であるかはケースバイケースですが、取締役の職務に関して何の引継ぎもなしに急遽辞任する場合には不利な時期にあたると解される可能性があります。ただし、会社にとって不利な時期であっても、取締役の側にやむを得ない事由があるときはこの損害賠償義務を負わないとされています。
(2)欠員の場合の権利義務の存続
取締役の辞任によって会社に取締役が1人もいなくなってしまう場合や、法令・定款で定められた取締役の員数を下回ることになる場合、当該辞任した取締役は、新たに取締役が選任され、役職に就任するまでの間、なお取締役としての権利義務を有します。すなわち、辞任しても取締役の地位が継続しているのと変わらず、引き続き取締役としての責任を負う、ということになります。そのため、辞任した取締役が取締役としての責任を免れるためには会社に対して新たな取締役の選任を求める必要があります。また、すぐには新たな取締役の選任が期待できない場合、裁判所に一時取締役の選任という手続きを申し立てることも考えられます。
(3)会社に辞任の登記をしてもらう必要があること
取締役を辞任した場合、その旨を登記し、対外的に公示する必要があります。しかし、取締役が辞任した旨の変更登記を申請する主体は会社であって取締役ではありません。仮に辞任後も変更登記がなされず、登記上は取締役であるような外観が残っていると、事情を知らない第三者から取締役としての責任を追及されるおそれが生じます。実際には判例はそのような取締役が第三者に対して責任を負う場合について制限的に解釈していますが、そうであっても取締役であるかのような外観が残るのはやはり望ましくありません。そのような事態を避けるためには、まずは会社に対して速やかに変更登記をするよう求める必要があります。仮に会社が変更登記に応じなければ会社に対して登記を求める訴訟を提起することも検討することになります。
取締役の解任
解任とは選任者の一方的な意思表示で職務を解くことをいいます。取締役の解任は株主総会の決議によって行われます。
取締役の解任についてはこちらの記事(取締役の解任)をご参照ください。
辞任と解任以外の退任事由
辞任と解任以外の取締役の退任事由は以下のとおりです。
- 任期満了
- 欠格事由の発生
- 死亡
- 会社の解散(委任の終了)
任期と欠格事由についてはこちらの記事(取締役の選任・任期)をご参照ください。
退任の登記
辞任以外の取締役の退任についても登記事項の変更となります。そのため、会社は変更登記をする必要があります。
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