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会社法

取締役会を開催する手続き

投稿日 : 2019年05月04日

取締役会の招集、議事の運営、議事録の作成について解説します。本稿では会社が取締役会設置会社であって監査役設置会社であることを前提とします。

取締役会を開催するための手続きの流れ

取締役会を開催するための手続きの流れは以下のとおりです。

以下ではそれぞれの手続きについて説明します。

各取締役・監査役への招集の通知

(1)招集権者

取締役会は各取締役が招集します。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集します。例えば、取締役会の決議によって代表取締役を議長兼招集権者と定めた場合、当該代表取締役が取締役会を招集します。

招集権者を定めた場合であっても、招集権者以外の取締役は招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して取締役会の招集を請求することができます。この請求があったにもかかわらず、取締役会が招集されない場合には、請求をした取締役は取締役会を招集することができます。

監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときであって、必要があると認める場合には、取締役(招集権者が定められた場合には招集権者)に対し取締役会の招集を請求できます。

(2)招集手続

取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間前までに、各取締役及び各監査役に対して招集通知を発します。通知に要する期間は定款の規定によって短縮することができ、実際に短縮している会社が多いようです。

招集通知には取締役会の開催日時と場所を記載します。目的事項については特に記載する必要はないと解されています。取締役会においては業務執行についてあらゆる事項が審議の対象となるからです。このことから、仮に招集通知に目的事項が記載されていたとしても、取締役会においては目的事項以外の議題について動議を提出することができ、審議・決議できると解されています(裁判例)。同じく、仮に定款等で招集通知には目的事項を記載するものと規定されていても、目的事項以外の議題について審議・決議できます。

招集通知の方法について制限はなく、口頭や電話で伝える方法、書面で伝える方法、電子メールで伝える方法等、いずれでも差し支えありません。

(3)招集通知の省略

取締役会への出席権者が招集手続きの省略に同意する場合には招集手続きを経ることなく取締役会を開催することができます。例えば、緊急に取締役を開催する必要が生じた場合、招集権者が電話等で出席権者全員に開催を通知し、招集手続きの省略につき同意を得た上で取締役会を開催することができます。

実務では毎月1回などの頻度で定例の取締役会を開催することがあります。この場合、事前に日時と場所さえ決めていれば招集通知を発する必要はありません。都度の通知を要しないことについて事前の同意があると解されるからです。もっとも、実務上は通知をしておくのが安全といえます。

招集手続きの有無にかかわらず、出席権者が全員出席している場合にはその同意の下に取締役会を開催することができます(全員出席取締役会。招集手続きの省略の場合には欠席者がありうる点で異なります)。

取締役会の開催(議事運営)

(1)定足数

取締役会の定足数は、議決に加わることができる取締役の過半数です。定款によってこれを上回る割合を定めることもできます。

定足数算定の基礎となる取締役の数は現在取締役に就任している取締役の総数です。後述する特別利害関係を有する取締役は定足数の計算には算入しません。定足数は開会時のみならず会議全体を通じて維持されなければなりません。

(2)決議要件

取締役会において取締役は1人1票の議決権を有し、その決議要件は出席取締役の過半数の賛成です。定款によってこれを上回る割合を定めることもできます。株主総会とは異なり、普通決議や特別決議の区別はありません。

決議の結果、可否同数となった場合には過半数という要件を満たさないことから、議案は可決されません。この点、可否同数の場合には議長が決することができる旨の定款の定めが有効であるかという問題があります。有効とする見解もありますが、実務では無効として取り扱われています。これとは異なり、議長に一任する決議に基づいて議長が裁決することは問題ありません。

(3)議事進行

取締役会の議事進行について法令上の規定はありません。社内の規則等があればそれに従うほか、会議の一般原則に従って行われます。例えば以下の流れで行うことが考えられます。

① 定足数の確認
② 開会の宣言
③ 議案の提案、審議、質疑応答、採決
④ 報告事項の報告
⑤ 次回の取締役会の日程の協議

(4)代理人による出席

取締役は自ら出席して議事に参加し、議決権を行使する必要があります。代理人による出席は認められません。

(5)テレビ会議・電話会議による参加

テレビ会議システム(相互に映像と音声の交信ができる方法)によって参加することは取締役会への出席として認められます。電話会議システムによって参加することについては争いはあるものの実務では有効として取り扱われています。

(6)議長

取締役会の議長について法令上の規定はありません。定款や取締役会規則等に従って選任されます。議長は議事を整理し、取締役会の円滑な進行に努めます。

特別利害関係人

決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません。取締役は会社のため忠実に職務を行わなければならないところ、決議について利害関係を有する場合には公正に議決権を行使することが期待できないからです。

「議決に加わることができない」とは、定足数にも算入されず、議決権も行使できないことを意味します。議長に就任することもできません。会議に出席して意見を述べる権利があるかについては否定する見解が有力です。もっとも、他の取締役が必要と認めた場合には特別利害関係を有する取締役を取締役会に出席させ、意見を述べる機会を与えることは可能です。

(1)特別利害関係を有する場合

特別利害関係を有する場合の例としては、
① 代表取締役を解職する場合(代表権を剥奪して平取締役とする場合)
② 取締役が競業取引や利益相反取引を行うことにつき取締役会が承認する場合
③ 取締役が譲渡制限株式を譲り受けることにつき取締役会が承認する場合
④ 取締役の会社に対する損害賠償責任を取締役会が一部免除する場合
⑤ 取締役に対して第三者割当増資をする場合
⑥ 監査役設置会社でない会社において会社と取締役の間の訴訟における会社代表者を定める場合
などがあります。

上記のうち、①代表取締役を解職する場合について、解職される代表取締役が特別利害関係を有するか否かについてはこれを否定する見解も有力ですが、判例は特別利害関係があるとの立場をとっています。

(2)特別利害関係を有しない場合

取締役会において代表取締役を選定する場合、当該選定の候補者となっている取締役は特別利害関係を有さず、議決に加わることができると解されています。

取締役の報酬について、株主総会で報酬の総額のみが承認され、その配分が取締役会に委任された場合、取締役会において分配額を決定することができますが、当該決定に係る決議について個々の取締役は特別利害関係を有しないと解されています。

取締役会議事録の作成

取締役会を開催した場合にはその議事の内容や結果を記録に残すため、議事録を作成しなければなりません。議事録は書面又は電磁的記録をもって作成します。

(1)議事録の作成者

会社法上、議事録の作成者は指定されていません。実務上は会社の総務関係の役職員が作成することになると思われます。

(2)議事録の内容

議事録には以下の内容を記載します。
① 取締役会が開催された日時及び場所
② 招集権者による招集でない場合はその旨
③ 議長の氏名
④ 議事の経過の要領及びその結果
⑤ 特別の利害関係を有する取締役がいる場合、当該取締役の氏名
⑥ 取締役会の構成員以外の者が出席した場合、当該出席者の氏名
⑦ 上記⑥の出席者が述べた意見又は発言の内容

上記のうち、議事録の主たる内容は④の議事の経過の要領であり、議案に関する審議の内容や報告事項について的確に概要を記載します。

(3)議事録への署名・押印

書面で作成された議事録には出席した取締役と監査役が署名又は記名押印します。

取締役会の決議に参加した取締役であって、議事録の内容に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定されます。取締役が決議に対すて賛成又は反対したとの事実は当該取締役の会社に対する責任に影響しますが、議事録の記載事項としては決議に対する賛成者や反対者の氏名を記載することまでは求められていません。そのため、決議に反対したことを記録したい取締役としてはその旨を議事録に記載するよう要求する必要があります。

(4)議事録の保存

取締役会議事録は、取締役会の日から10年間、本店に備え置かなければなりません。一定の手続きや要件を満たした株主や会社債権者は議事録の閲覧又は謄写を請求することができます。


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