会社法
代表取締役を解職・解任する手続きと注意点
投稿日 : 2019年03月16日代表取締役の解職・解任に関する会社法上の規定や判例について解説します。本稿では会社が取締役会設置会社であることを前提とします。
代表取締役の解職・解任とは
解職・解任のいずれも選任者の一方的な意思表示で職務を解くことになりますが、解職と解任では以下のとおりその内容が異なります。
【解職】
解職とは代表取締役から代表権のみを失わせ、平取締役とすることです。この場合、代表取締役は引き続き取締役としての権限を有し、取締役会に出席することもできます。
【解任】
解任とは代表取締役の取締役としての地位を失わせることです。この場合、代表取締役は取締役ではなくなり、会社との委任関係は終了します。同時に代表権もなくなります。
代表取締役を「解職」する手続き
代表取締役を解職する、すなわち代表権を失わせるのは取締役会の決議によって行います。代表取締役の解職に関する決議事項は、取締役会で通常行われている他の決議事項と同様、出席した取締役の過半数をもって決議します。
代表取締役を解職する決議において、審議の対象となっている代表取締役は当該決議について特別の利害関係を有すると解されており、議決権を有しません(判例)。また、決議の員数としてもカウントされません。
そのような特別利害関係を有する代表取締役は取締役会において意見を述べることは認められず、出席する権利も有しないと解するのが一般的です。そのため、代表取締役を解職する決議においては審議の対象となっている代表取締役は求めがあれば会議室から退席しなければなりません。当然、当該決議において議長を務めることもできません。もっとも、他の取締役が差し支えないとして認めるのであれば、当該代表取締役は会議室に在室し、発言をすることができます。
解職の通知
取締役会で代表取締役の解職の決議がなされた場合、ただちにその効力が生じます。対象となる代表取締役への通知は解職の効力発生要件ではありません。もっとも、以後は代表取締役として振る舞うことのないよう、本人に通知しておくべきでしょう。
取締役会で新たな代表取締役を選定する
取締役会設置会社の場合、代表取締役は必ず選定しなければなりません。前職の代表取締役の解職を決議した取締役会において新たな代表取締役を選定することになります。
変更の登記
代表取締役が誰であるかということは会社の登記事項とされています。代表取締役を解職し、新たな代表取締役を選定した場合には変更登記を行う必要があります。
代表取締役を「解任」する手続き
代表取締役の解任は基本的に取締役の解任と同様です。その手続きや留意点についてはこちらの記事(取締役の解任する方法と注意点)をご覧ください。
代表取締役が会社の株式の過半数を保有している場合
代表取締役がオーナー社長であるなど会社の株式の過半数を保有している場合、当該代表取締役を解職することには注意が必要です。過半数を保有する株主は単独で株主総会決議を可決することができます。そのため、株主総会決議を通じて意に沿わない取締役を解任し、新たな取締役を選任することが可能です。
仮にオーナー社長の反対派がクーデター的に社長を解職させて代表権を奪うことができたとしても、最終的には反対派の取締役は株主総会で解任されて排除されてしまいます。同様に、経営陣が二派に分かれて争っている場合においても最後に物をいうのは株主です。そのような場合には代表取締役の解職によっては問題の解決にはならないことが多いと思われます。
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