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債権回収

工事請負代金を回収するための方法

投稿日 : 2019年06月02日

工事請負代金を回収するための方法について解説します。

工事請負代金が支払われない理由

工事請負代金が支払われない理由は紛争の原因に応じて様々です。以下では代表的な支払い拒否の事例を挙げます。

(1)追加工事の代金が支払われない事例

工事が始まった後、施主や元請からの要請に応じて工事内容に追加や変更がなされることがあります。そのような追加工事の実施に伴う工事代金の増額を巡って施主や元請との間で争いになり、工事代金が支払われないケースがあります。

追加工事の内容がきちんと書面でなされていれば問題にはなりにくいはずです。しかし、工事請負の現場の実情としては、追加工事について記録することは後回しにされ、その費用負担について曖昧なまま工事が進められることがあります。後になって請負人がその代金を請求しても、施主から「費用が発生するとは聞いていない」と言われたり、元請から「別の現場で埋め合わせるから」などと言われ、泣き寝入りを迫られることがあります。

(2)工事の瑕疵を巡って代金が支払われない事例

工事の完成後、施主や元請から瑕疵があると主張されて代金が支払われないケースです。これには元々の契約内容における仕様の解釈に齟齬がある場合や、仕事の品質の評価が分かれる場合など様々な原因が考えられます。

一応は仕事が完成しているのであれば、瑕疵があるとしても請負人としては代金を請求する権利を有します。しかし、施主や元請は瑕疵の修補をしない限りは代金を支払わないので、請負人は修補に応じるか、あくまでも代金の支払いを求めるかの判断を求められることになります。

(3)工事の完成の有無が争われる事例

請負人が工事を完成させたと考えて施主又は元請に対して請負代金を請求したところ、「約束していた工事はまだ完成していない」と主張され、代金支払いを拒まれるケースです。これは、何が契約上定められた工事の内容であったについて双方に認識の齟齬があるのが原因であると考えられます。

工事請負契約には対象となる工事の内容が定められているはずであり、それが建設業法上の義務でもあります。しかし、やはり工事請負の現場では、工事の内容・範囲が明確に書面化されていないケースが多々あります。例えば、契約書という形式ではなく、「○○工事一式」といった簡単な記載の見積書や発注書だけで工事が進められることがあります。これは特に下請や孫請などの末端の請負になればなるほど顕著であると思われます。

工事の内容が明確でない場合、どこまでやれば工事が完成したといえるのか、どの段階で代金請求できるのかが明確でなく、代金が支払われないトラブルに発展しやすいといえます。

(4)施主や元請の資金繰りが悪化して代金が支払われない事例

工事に問題があったわけではなく、施主や元請の資金繰りが悪化して代金が支払われないことがあります。このように資金繰りがネックとなる場合は純粋な債権回収の問題であり、請負工事に特有の事態というわけではありません。もっとも、実際には単なる資金繰りの問題であるにもかかわらず、施主や元請は工事に瑕疵があるなどと難癖をつけて支払いに応じないことがあります。

協議による解決

どのような問題であるにせよ、まずは当事者間で協議して解決を図ることが最初のステップになります。

協議が不調に終わって法的な手続きを行うことになると、そのための時間、コスト、手間がかかります。特に、工事に関する紛争は専門性が高く、そのような手続きの負担は重いものとなります。

まずは協議による解決を目指し、どうしても妥協点が見いだせない場合に法的な手続きに移行することになります。

催告書の送付

自社の主張を相手方に伝えるとともに、正式な書面で代金等の支払いを求めるため、施主又は元請に対して催告書を送付します。記録に残すために実務上はこの書面は内容証明郵便で送付します。詳しくは内容証明(催告書)に関する記事をご覧ください。

留置権の行使

代金支払いを担保するため留置権の行使を検討します。留置権とは、相手方から代金等の支払いを受けるまでは当該相手方から預かっている物の引渡しを拒むことができる権利です。留置権は要件を満たせば法律上当然に生じます。

工事に際して請負人が建物等を占有しているのであれば、留置権を行使してその引渡しを拒み、代金の支払いを求めることが考えられます。詳しくは留置権に関する記事をご覧ください。

仮差押え

代金の支払いに関する紛争に時間を要すると見込まれる場合、仮差押えを行うことを検討します。仮差押えとは、将来勝訴判決を得た場合に確実に相手方の資産を差し押さえることができるよう、相手方が有する資産の処分を禁止し、現状を維持するための手続きです。仮差押えは現状を維持するための手続きですが、仮差押えを受ける側にとっては何かと支障になるので交渉上のテコとしても活用できます。詳しくは仮差押えに関する記事をご覧ください。

建設工事紛争審査会への申立て

建設工事請負に関する専門の紛争解決機関として建設工事紛争審査会があります。審査会は、国土交通省に中央建設工事審査会があり、各都道府県には都道府県の建設工事紛争審査会が設置されています。

審査会の取扱い対象は建設工事の請負契約に関する紛争とされています。審査会が実施する手続きとしては、あっせん、調停、仲裁があります。あっせんと調停は審査会の関与のもと、当事者間の合意による解決を図る手続きです。あくまでも任意の合意を目指すものであり、判決や仲裁のような強制力はありません。

これに対して仲裁は審理の結果に基づいて仲裁判断を下す裁判類似の手続きです。仲裁判断は確定判決と同一の効力が認められています。仲裁を行うには前提として当事者間に仲裁を行うことについての合意(仲裁合意)が必要となります。

行政庁に対する申立て

元請に建設業法に違反する行為がある場合には、国土交通大臣又は都道府県知事に違反の事実を通報することができます。建設業法に定めのある義務の違反がある場合には通報を契機として立入検査や処分がなされる可能性があります。

特定建設業者は同社が注文者となった下請契約に係る下請代金を支払期日までに支払わなければならないとされています。下請業者としては、元請たる特定建設業者に請負代金の未払いがあった場合は監督官庁に対し建設業法違反であるとして事実を通報することが考えられます。

特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事の全部又は一部を施工している他の建設業を営む者が、当該建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合、行政庁から特定建設業者に対し立替払い等の勧告を出してもらうよう申立てをすることができます。上記の「他人に対する損害」には下請代金の未払いによる損害も含まれると解されています。元請の先に特定建設業者がいる場合、下請代金の立替払いを受けるために上記の勧告を申し立てることが考えられます。

注意点として、上記の各種申立てはあくまでも行政庁に対する監督権限の行使を事実上促すものに過ぎず、実際に措置がとられるか否かは行政庁の裁量によります。

訴訟の提起

裁判所に対して訴訟を提起し、判決を求める方法です。訴訟を提起すると当事者は裁判所において主張立証を行い、裁判所は審理を通じて事実認定と法的判断を行います。訴訟の審理には相応の時間を要しますが、訴訟を提起すれば最終的には判決又は和解によって何らかの解決に至ります。そのため、紛争解決のための最終手段として訴訟を用いることになります。

紛争の原因が何であるかにもよりますが、一般に建築訴訟は建築に関する専門的な知識が求められる難度の高い事件となります。そのため、東京や大阪などの大規模庁では建築訴訟に特化した専門部を設置して集中的に事件を処理する体制がとられています。

裁判所は手続きに建築の専門委員を関与させることができます。専門委員の制度は特定の分野について知識経験を有する専門家が争点整理や証拠調べに加わる仕組みです。

また、建築訴訟が提起された後、裁判所の判断で事件が調停に付されることがあります。調停では裁判官のほか調停委員が手続きに関与して当事者双方の合意による解決を図ります。

訴訟の手続きについて詳しくは訴訟に関する記事をご覧ください。

請負代金債権の時効

請負代金債権の時効は3年とされています(2020年4月の民法改正前まで)。債権が時効にかかってしまうと請求ができなくなってしまうのでご注意ください。
          


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