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会社法

剰余金の配当をする手続き

投稿日 : 2019年07月15日

剰余金の配当について解説します。本稿では、配当をすることができる金額(分配可能額)、配当をする手続き、配当に関する取締役の責任等について説明します。

剰余金の配当とは

剰余金の配当とは、いわゆる配当のことであり、会社が株主に対してその有する株式の数に応じて金銭等を分配することです。多くの企業では財務状況を踏まえて毎年の定時株主総会後に配当を実施します。また、期中に中間配当を行うこともあります。

配当をすることができる金額(分配可能額)

配当は金銭等を株主に払い戻す行為であり、会社財産を減少させることになります。会社財産を引き当てとする会社債権者の保護を図る必要があることから、配当の財源には法令上一定の制限がかかります(「分配可能額」といいます)。

株主に対する配当はこの分配可能額の範囲内で行う必要があります。分配可能額を計算する方法は会社法や会社計算規則に定められているのですが、この計算に関する規定は極めて分かりにくいものとなっています。以下では、できる限り整理した形で計算方法の概要を示します。

(1)最終事業年度の末日時点における剰余金の金額

分配可能額の計算の基礎となる金額は、最終事業年度の末日における「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」の合計額に相当する金額です。

「最終事業年度の末日時点における剰余金の金額」
     =「その他資本剰余金」+「その他利益剰余金」

(2)控除する金額

上記(1)の「最終事業年度の末日時点における剰余金の金額」を出発点として、以下の金額をそれぞれ控除します。

ア 配当をする時点での自己株式の帳簿価額
イ のれん等調整額(のれん又は繰延資産がある場合の所定の控除額)
ウ その他有価証券評価差額金がマイナスである場合の当該差額
エ 土地再評価差額金がマイナスである場合の当該差額
オ 連結配当規制適用会社である場合の所定の控除額
カ 配当後に300万円の純資産を維持するための控除額

「控除後の金額」=「最終事業年度の末日時点における剰余金の金額」-「上記アないしカ」

(3)最終事業年度の末日以降の事由により調整する金額

最終事業年度の末日以降に所定の事由が発生した場合には調整を行います。そのような事由のうち主なものは以下のとおりです。

ア 資本金・準備金の増減
イ 自己株式の消却
ウ 剰余金の配当
エ 臨時計算書類の作成

「分配可能額」=「控除後の金額」+「最終事業年度の末日以降に発生した事由により調整する金額(+/-)」

(4)分配可能額

上記(1)ないし(3)による計算を経て得られた分配可能額が配当をすることができる上限額となります。

(5)純資産が300万円を下回る場合の制限

計算上、分配可能額が存在する場合であっても、純資産が300万円を下回る場合には配当をすることはできません。例えば、資本金100万円で設立した会社が利益を計上することによって純資産を200万円に増やしたとしても、300万円に達していないので配当は許されません。

配当をする手続き

(1)株主総会による決議

剰余金の配当は、原則として株主総会の決議によって決定します。決議は普通決議で足ります。配当に関する決議においては以下の事項を定めます。

ア 配当財産の種類及び帳簿価額の総額
イ 株主に対する配当財産の割当てに関する事項
ウ 当該剰余金の配当がその効力を生ずる日

上記のうち、アの配当財産の種類としては、通常は金銭(1株あたり10円など)ですが、金銭以外の現物を配当することも可能です。

イの割当てに関する事項としては、種類株式を発行している場合に株式の種類に応じて異なる取扱いとすることが可能です。なお、種類株式の発行の有無にかかわらず、配当財産の割当ては株主の有する株式の数に応じて割り当てることを内容としなければなりません。

ウの効力発生日について、この日に株主が会社に対して配当金請求権を有することになります。

(2)中間配当に関する定款の定め

取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって配当をすることができる旨を定款で定めることができます。これにより、いわゆる中間配当について取締役会が決定することができます。中間配当は3月決算の場合には9月末を基準日とすることが多いですが、会社法上は事業年度内であればいつでも行うことができます。

(3)取締役会が配当を決定することができる旨の定款の定め

上記(1)のとおり、配当を決定するのは原則として株主総会ですが、以下の要件を満たす会社においては定款に定めを置くことで取締役会が配当を決定することができるようになります。

ア 会計監査人設置会社であること
イ 取締役の任期が1年を超えないこと
ウ 監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会設置会社のいずれかであること
エ 最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件(会計監査人の無限定適正意見が付されていることが含まれる)

取締役会が配当を決定することができる旨の定款の定めを置くことによって株主総会の権限がなくなるわけではありません。株主総会によって配当を決定することも可能です。もっとも、下記(4)の定款の定めを置いた場合はこの限りではありません。

(4)株主総会が配当を決定しない旨の定款の定め

上記(3)の定款の定めがある会社においては、株主総会が配当を決定しない旨を定款に定めることができます。この場合、株主総会においては配当を決定することができなくなり、取締役会のみが配当を決定することができるようになります。

ただし、かかる定款の定めが効力を有するためには上記(3)のエと同様の要件を満たす必要があります。

分配可能額を超えて行われた配当の責任

分配可能額を超えて配当が行われた場合、それは適法な配当とはいえません。そのため、配当を受けた株主は交付された金銭等の相当額(分配可能額を超える額ではなく、配当の全額)を会社に対して返還する義務を負います。しかし、実際に多数の株主から会社が回収を図ることは困難といえます。そこで、会社法では、配当に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役・執行役)、配当に関する議案を提案した取締役、その他法務省令で定める取締役等は、株主と連帯して会社に対して金銭を支払う義務を負うとされています。

責任を負う取締役等は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときには支払い義務を負いません。違法配当に関する取締役等の責任を免除するためには総株主の同意が必要となり、しかも免除することができるのは分配可能額の範囲に限られます。

仮に取締役等が義務の履行として会社に支払いをした場合、当該取締役等は株主に対して求償することができますが、配当が違法であることについて善意である株主に対しては求償することができません。

分配可能額を超える配当が行われた場合、会社債権者は株主に対し、その交付を受けた金銭等の相当額を自己に対して支払うよう請求できます。

欠損が生じた場合の責任

配当をした日の属する事業年度に係る計算書類につき、分配可能額がマイナスになった場合(欠損が生じた場合)、配当に関する職務を行った業務執行者は、会社に対して連帯して欠損額又は配当をした額のいずれか少ない額を支払う義務を負います。

ただし、定時株主総会の決議に基づいて配当が行われた場合には上記の責任は生じません。例えば、3月決算の会社が定時株主総会の決議に基づいて6月末に配当を行った場合、翌年3月期の決算において欠損が生じても責任は生じません。他方で、同じ会社が12月に中間配当を行った場合、翌年3月期の決算における欠損について責任が生じえます。

資本金・準備金の額の減少を定める株主総会において配当の決議がなされ、かつ配当の総額が資本金等の額の減少を超えない場合にも上記の責任は生じません。

この責任が過失責任であることは分配可能額を超える配当に関する責任と同様です。責任の免除には総株主の同意が必要となります。

配当後の積立て

配当を行った場合、配当額の10分の1に相当する金額を資本準備金又は利益準備金として計上しなければなりません。この積み立て計上は資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の額の4分の1に相当するまで行わなければなりません。
            


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